さらに、半・分解展では、試着サンプルも購入できる。サンプルは生地もオリジナルで開発し、刺しゅうも手作業という手の込んだものだ。同じサイズの同じデザインはこの世に二つとない。その希少価値に魅力を感じた人たちが、1着20万円ほどする服を購入していく。
また、展示や型紙以外にオファーがある仕事も、長谷川さんにしかできないものばかりだ。例えば、美術館や学会での講演、ゲーム会社のデザイナー向けに、100年以上の服のデザインや構造を解説することもある。
半・分解展の展示の収益に加えて、型紙や服の販売、講演・書籍化が重なり、"1度売って終わり"ではない多層的な収益構造になっているのだ。
表現活動は、自分の技術を抽象化したもの
長谷川さん自身は、もともと物欲のないタイプだ。しかし、古い服を研究するためには買い取る必要があり、資金もいる。自分の好きな研究を続けていくために、どのように収入を得たらよいのか、ずっと模索し続けていたという。
そして、型紙が想像以上に売れたときに「自分の服作りの技術を、服を作ることではなく、設計図を作ることに役立てればいいのだ」と気づいた。
「1着の服を仕上げても、その服はお客様が購入する時にしかお金をもたらしません。何カ月、何年かけて作ったものも、価値を生むのは一度だけ。一方で、型紙は何度も服を作れるから継続的に価値を生み続けるし、その貴重さゆえに、年々価値は上がっていきます」
パタンナー時代、デザイナーの抽象的なアイデアを具現化するプロフェッショナルだった長谷川さん。しかし、結果として提供するものが服だけだった。そこに購入者が対価を払う基準は「その服がかっこいいか、自分が着られるか着られないか」だ。
だが、研究成果を実物に触れられる展示にしたことで、洋裁をする人だけでなく、服飾史や美術に関心のある人にも価値が届いた。
「パタンナーの技術は尊いものだし、自分の得意なことでもある。でも、服を作ることにこだわりすぎず、ときには捨てることも必要だと気づきました。僕が行う表現活動は、自分の技術を抽象化したものなんです」


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