データとして面白いのは85年の落合博満だろう。落合はこの年、52本塁打を記録しているが、この年のパ・リーグは年間1050本もの本塁打が生まれ、リーグ全体の本塁打率も24.99と打者に有利な環境だった。今年のセ・リーグの43.97と比べると約1.7倍もホームランが出やすかった。このため落合の本塁打率の傑出度は2.825倍となり、佐藤の3.182倍をデータ上では下回る。
もちろん、これだけで佐藤が落合より優れた打者だったとは当然言えない。それでも年代をまたぐ選手を比較する場合、本塁打の本数だけで単純に優れているとは言いづらいのも理解していただけるのではないだろうか。
なお今回のデータでは球場ごとの差については反映していない。佐藤がホームスタジアムとする甲子園球場はライトからレフトへ吹く強烈な風、いわゆる浜風の影響で左打者にとってホームランが出にくい球場として知られている。もし他のスタジアムを本拠地としていれば、さらに記録を上回った可能性もある。
<打点編>
打点については、犠牲フライや押し出し四球など、打数に含まれない打席でも記録されるため、打数ではなく打席数を使い、「個人の1打席当たり打点数÷同年のリーグ全体の1打席当たり打点数」で傑出度を算出した。
今年の佐藤は614打席で106打点を記録した。100打席当たりに換算すると17.26打点となる。一方、セ・リーグ全体では100打席当たりでは8.77打点だった。つまり佐藤は、リーグ平均の1.968倍のペースで打点を記録していたのである。これを歴代12例で比較すると、7位だった。またブーマーは130打点、佐藤は106打点と24打点も差があるが、リーグの打撃環境と打席数を考慮すると、佐藤は1.968倍でブーマーの1.956倍を上回った。
最も傑出していたのは22年の村上宗隆でリーグ平均の2.341倍。2位は73年の王貞治で約2.332倍、3位は65年の野村克也で2.145倍だった。
一方で打点については前を打つ選手の出塁率や打順にも大きく左右されるため、この数字だけで打者個人の能力を測ることができないことは留意したい。
傑出したタイプというよりは、バランス型の三冠王
ここまで3部門の傑出度を比較してきたが、結果を一覧にすると、さらに興味深いことがわかる。
まず圧倒的なのが73年の王貞治だ。今回の比較では打率、本塁打、打点の3部門すべてで歴代2位という結果になった。王は打率.355、51本塁打、114打点という絶対的な数字でも優秀だったが、当時のリーグ全体と比較しても突出していた選手だったことがわかる。
一方、86年のバースは打率の傑出度が歴代1位。本塁打も5位、打点も6位だった。特に打率で圧倒的な成績を残した三冠王だったことがわかる。
バースと対照的なのが22年の村上宗隆だ。村上は打率の傑出度が歴代11位と下位だったのに対し、本塁打と打点ではともに歴代1位。長打力によって他の打者を圧倒した、パワー型の三冠王だったと言える。今年MLBのシカゴ・ホワイトソックスに移籍した村上はレギュラーシーズンで打率.207、35本塁打、77打点という成績を残した。35本塁打は日本人ルーキー史上最多であり、その力を遺憾なく発揮したと言える。
そして新たに三冠王に名を連ねた佐藤だが、今回の比較では、打率が8位、本塁打が6位、打点が7位と、3部門すべてが歴代12例の中位前後に収まっている。特定の一部門で傑出度を示したタイプというより、投高打低の環境で、打率、長打力、打点を高い水準で両立させたバランス型の三冠王だったと言えるのではないだろうか。
今回の比較は、あくまでも当時のリーグ全体に対する傑出度を測ったもので、選手の純粋な打撃能力を示すものではない。それでも、佐藤は3部門すべてで歴代最低というわけではなく、単純な数字だけで「史上最低の三冠王」と断じるのは、公平な評価とは言えないだろう。


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