アメリカにおける商用使用済み核燃料は9万トン以上存在する。その中に含まれるプルトニウムは全体の約1%として、約900トン規模である。このことは、アメリカでトリウム用のマッチの先として100トン使用しても、さらに余剰分があるということだ。
その余剰分を、トリウムだけを持っているがマッチの先としてのプルトニウムを保有していない国に提供する枠組みも考えうる。
例えば、オーストラリアでもレアアース生産に伴って発生するトリウムの量を試算すると4000トン前後に達するとみられる。しかし、オーストラリアは商業用原子力発電を行っていないため、膨大なトリウムと共に抱き合わせうるアメリカのような大規模な商業用使用済み燃料由来のプルトニウム資源は持っていない。
オーストラリアにプルトニウムという価値を提供することで、米豪両国の戦略的協力関係を強化することに結びつけることも考えられる。
アメリカとオーストラリアの戦略的協力関係
アメリカのスタートアップAmpera(アンペラ)は、26年2月に現地法人となる「Ampera Australia Pty Ltd」を設立し、オーストラリアの豊富な重砂鉱床から採掘されるレアアース鉱物であるモナザイトからのトリウムを直接買い付け、アメリカへ輸入する体制を構築しようとしている(「レアアース大国・オーストラリアが動き始めた『トリウム再利用』の衝撃、溶融塩炉で日本だけが取り残される危うい現実」参照)。
これは、25年10月に米豪政府間で締結された「重要鉱物(クリティカル・ミネラル)供給協力フレームワーク」の2国間協定をバックボーンとして活用している。
原子力を拡大するためには、ウランの供給が必要だ。「今、世界では原子力を進めているのだから、ウランはあるのでしょう?」と思うかもしれない。
サプライチェーンマネジメントの視点で見れば資源量のほか、生産設備のキャパシティがカギとなる。生産設備は、ウランの場合、主として濃縮設備について着目する必要がある。世界の大半を占める軽水炉では、天然組成のウランでは核分裂をさせることはできず、ウラン235の濃縮度を高めなければならないからだ。
昨今、報道でもしばしば伝えられる先進原子炉では、標準的な軽水炉で使用されるものより濃縮度を高めたHALEU(高濃度低濃縮ウラン)を必要とするものが多い。ところがそのHALEUの濃縮・供給能力にボトルネックがある。
このため、アメリカの商用使用済み核燃料に眠る900トン規模のプルトニウムを抽出してトリウムのマッチの先として活用する構想は、HALEU供給能力の制約を背景に、使用済み燃料中のプルトニウムを燃料資源として利用する選択肢にも意味が出てくる。

