「起立性調節障害は、わかりやすく言えば、昔からいわれている自律神経失調症です。
寝ているときは心臓と脳は同じ高さですが、起き上がると脳の位置が急に高くなります。その脳に血液を送るために、自律神経の働きで血圧を上げて血流を促します。
しかし自律神経の働きが弱い人は、これがうまくできないために脳への血液不足で頭痛がする、めまいがする、吐き気がする、起きられないという状態になるわけです。
こうした症状は検査しても明確な原因が見つからない『不定愁訴』というものなので、まわりに理解されにくいのです」(成田教授)
これを改善するのに必要なのは、なにより「生活改善」だという。朝早く起きて夜は早く寝るという生活リズムが、自律神経を整えることにつながるからだ。
しかし現代は、夜更かしの生活に慣れてしまっている子どもが多い。そういう生活リズムが自律神経を弱くしてしまっている。そこを改善することが必要なのだ。
成田教授自身は、どうやって起立性調節障害を克服したのだろうか。
「夕方5時に帰ってきて6時くらいには寝て、夜中の2時には起きて勉強する生活に変えました。自分の身体と相談して、それが自分にいちばん合う生活リズムだとわかったからです」
自律神経が働くためには、じゅうぶんな睡眠時間の確保が不可欠だという。だから成田教授は8時間を確保していたのだ。
とはいえ、夜型だった生活を朝型に変えるのは、誰にでも簡単にできることでもなさそうだ。それは成田教授も承知している。
認められると励みに
成田教授は不登校などの不安や悩みを抱える親子を支援する「子育て科学アクシス」を主宰しているが、起立性調節障害で悩む親子も多く訪れる。そこで、無理のない生活改善方法を指導している。
「昼夜逆転の生活をしている子に、いきなり『朝6時に起きなさい』といっても無理です。まず目標を決めさせるのですが、いつも起きている時間より15分か20分早い目標を立てさせます。そして、2週間後に来てもらうと、だいたい目標より早く起きるようになっています」
それを繰り返していくうちに、朝起きる時間は早くなっていく。ただし、目標をクリアするために、早く寝るように指導したりはしない。
「早くベッドに入っても、眠れなければイライラするだけで、逆効果でしかありません。起きてから一定の時間が経てば人間の脳は眠くなるようにできているので、少しずつ早く起きられるようになれば、それにともなって寝る時間も早くなっていきます」
そのとき大事なのが、保護者の対応だという。
「保護者に認められることは子どもにとっては、大きな励みになります。自力で早く起きてきたことを認めるひと言を保護者がかけてあげれば、改善のスピードは速くなります」
とかく子どもが“怠けているだけ”と保護者は考えがちなのが、起立性調節障害である。しかし、怠けているわけではなく身体の症状なのだ。それを改善していくために必要なことは、親子で取り組む姿勢のようだ。
(フリージャーナリスト・前屋毅)

