ただし、ここで「盆栽」と「鉢植え」の区別を気にする必要があるようだ。
鉢植えも盆栽と同じく、鉢に植えて育てる植物。とはいえ、チューリップやハーブの鉢植えが盆栽かというと、「それはちょっと違うのでは?」ということは素人にもわかる。
こうした草物であっても、植木鉢の中で年数を重ねることによって、複雑な表情が生まれて風格が出てくるのです。盆栽界ではこのように変化した草物を、「おっ、このフウチソウ。ずいぶんと持ち込んだね」などと表現して褒めたりします(盆栽界では年数をかけて育てることを「持ち込む」と言います)。(18ページより)
逆に盆栽と呼ぶのが難しいのが、江戸時代に流行した古典園芸であるアサガオ。
夏の風物詩として親しまれているが、一年草であるため蔓(つる)ごと一度枯れ、翌年にはまた種まきからはじめるため、「持ち込み」はできないのだ。
同じことはサボテンの鉢植えなどにもいえるそうだが、つまりは生きた樹木を相手にしつつ、時間をかけて形を作っていくのが盆栽だということなのだ。
名木は山で探した「山採り」に多い
盆栽は鉢植えと違って種から育てることが少なく、普通は苗木などから育てることになる。
盆栽用の苗木を畑で生産している専門の農家もあり、有名なのは香川県高松市の鬼無(きなし)と埼玉県川口市の安行。両者ともに松の苗木の生産地で、盆栽産業の拠点とさえ呼ばれているようだ。
しかし盆栽界でも名木となると、その多くは苗木から育てたものではない。山などの険しい土地で、小さなまま歳月を経て育ったような樹木に価値がつくわけである。
いわばレアな樹木なので、それらは人が苗から育てた樹にはない、予想外の枝ぶりをしているのだろう。
“山から採ってきた盆栽”は「山採り」と呼ばれているそうだが、野性味を活かしながら、時間をかけて盆栽に仕立てるのだから、マニア心を刺激するのも当然だ。

