盆栽のことを、「生きた芸術作品である」と発言する人がいるそうだ。
もちろん見方や考え方は人それぞれなので正解はないが、著者は盆栽を芸術やアートと呼ぶのはふさわしくないと思っているという。
「芸術」という言葉は、近代になって西洋のLiberal artsを翻訳したものだ。Liberal artsは本来、算術や幾何、天文や音楽などを意味しており、現在は「自由学芸」などと翻訳されている。
つまりArtとは“人間の営み”を意味しており、自然を意味するNatureとは対義語の関係にある。
絵画においても描き手はプロからアマチュア、素人までが混在しているが、そのすべてが芸術になるわけではない。
絵画や彫刻などは人間による表現活動の一種で、それが宗教性や社会批判などを内在させつつ芸術となってくるわけである。
そのため美術愛好家の世界であれば、「この表現には芸術が成立しているね」といった言葉づかいになってくるだろう。
樹そのものも、人間の制御を離れて成長していき、自己主張をはじめる。そうやって、人間の意図を超えた樹が出てくるわけである。
つまり盆栽は、人と樹の相互の関わりによって成立していることになる。
だからこそ、それを人の営みでしかない「芸術」という言葉で制限してしまうのは違うのではないか。著者はそう考えているわけだ。納得できる話である。
今、世界中が「BONSAI」に大注目
なんとなく伝え聞いてはいるが、いま、日本人以上に外国人が盆栽に熱い視線を送っているのだという。
たとえば盆栽の最大級の展覧会「国風盆栽展」では、アメリカ、中国、イタリア、スペイン、スイス、ブラジル、タイ、スリランカ、メキシコからの作品が並んでいるというのだ(国民性がどのように反映されるのか、興味深いところ)。
また、これも知られたことではあるが、アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏、マイクロソフト共同創業者のビル・ゲイツ氏、アリババ創業者のジャック・マー氏らは盆栽愛好家としても有名。
日本の盆栽園にも訪れ、盆栽を購入しているのだという(いかにも爆買いしていそうで、ちょっとうらやましい)。
ともあれ、そんなところからもわかるように、「BONSAI」はいまや世界中で認知され、愛されているのだ。
したがって、グローバルな仕事をしている人であるほど、盆栽の知識はビジネスにも役立つに違いない。
本書に「世界のビジネスエリートを惹きつける」というサブタイトルがつけられているのも、そんな状況があるからだ。
それに、盆栽の楽しみ方を知れば人生はより豊かになる可能性がある。そう考えると本書は、いろいろな意味で「使える」わけである。私も、これを機会に最初の一歩を踏み出してみようかなと考えている。

