これは非常にありがたい。著者がいうように「身近な存在」でありながら基本を知る機会は意外と少なく、それ以上に「どこを見て、どう楽しめばいいのか」という「ながめ方」を知る方法は限られているからだ。
とはいえ「盆栽に関心はあるけど、なにも知らない」という方も多いだろうと思うので、ここでは第1章「まずは押さえておきたい 盆栽の基本」のなかから、いくつかのポイントを抜き出してみよう。
盆栽の定義とはいったいなんなのか?
もし外国人から「What is BONSAI?」と尋ねられたら困るのではないか。
著者はそう指摘しているが、当然である。なにしろ(私も含め)大多数の人は、その問いに対する答えを持ち合わせていないのだから。
それに、とりわけマニアックな領域にあるものに共通して言えることだが、とかく趣味的なものは知識豊富な愛好家(マニア)たちによって囲われてしまいがちである。
知識の「ち」の字も知らない人間が近寄ろうとしても、なかなか受け入れてもらえないわけだ。ディスっているわけではなく、そういうものなのである。
ともあれ、盆栽の定義とはなんなのか。果たして定義なんてものがあるのか。
著者によると、この点について考えるにあたっては言葉の成り立ちから考えてみるのがいいようだ。
たとえば盆栽の関係者のなかにも、「盆栽」の「栽」を“切る”という意味でとらえ、「枝を切って育てるから『盆栽』というのだ」と説明する人がいるらしい。
ところがそれは勘違いであり、「布を切る『裁断』」、「有罪かどうか線引きする『裁判』」などの「裁」のイメージに引きずられているというのだ。
たしかに「裁」という漢字はもともと“服を作る”ことを意味するもので、盆栽とは無関係である。
もっとも「前栽」は平安時代から使われており、「盆栽」が定着するのは江戸時代の終わり頃。この二つの言葉にはかなりの時間差があります。(17ページより)
言葉ひとつとっても、なかなか興味深いところだ。

