「若手社員の早期育成と、同期・先輩後輩との一体感をいかに醸成するか」。同社がこの社宅本来の目的に立ち返った結果、建設・不動産部門の協力のもと、立地・利便性・広さを総合的に検討して選ばれたのが日吉の地だった。
こうして18年、集約型の大規模最新鋭寮「日吉寮」が誕生した。女子寮についても同様に集約化が進められ、25年3月に川崎市宮前区の閑静な住宅街に新たな女子寮が開設された。
物価高や住宅価格の上昇で見直される“社宅の価値”
伊藤忠のような社宅再評価の動きは、客観的なデータにも明確に表れている。総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」によると、企業が従業員に提供する「給与住宅(社宅・社員寮)」の戸数は約130万2000戸に達した。前回の18年調査(約110万戸)から増加へと転じ、1993年以来30年ぶりの増加となった。

長年続いていた減少傾向が底を打ち、反転増へ向かった事実は大きい。長引く物価高や住宅価格・家賃の上昇に対し、企業が福利厚生としての住まいの支援を強力な手札として再認識し始めたといえる。住居費の負担を減らすことで若手社員の生活基盤を安定させ、本業に集中できる環境を整える取り組みが日本企業全体で再拡大しようとしている。
時代とともに社宅の「ハード」と「ソフト」は劇的な変化を遂げたが、根底にある本質には変わらないものもある。変わらないのは、「社員の生活基盤を支え、同じ会社で働く仲間との繋がりや組織の一体感を育む場」という根本的な役割である。


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