もう1つの柱が、教科探究です。例えば5年生の社会科で工業について学ぶ単元では、「あなたがロケット会社の社長なら、アメリカのどこに工場をつくるか」といったパフォーマンス課題を提示します。
答えを出すには、「工業地帯が発展する地域は、主に海沿いで、交通網が発達している地域(太平洋ベルト等)である」という概念理解を前提に、学んだ知識を関連づけ、自分なりの根拠をもって判断する必要があります。
理解度が違う子どもたちに対して教員は、基本情報が得られる動画や、掲示物、実際に子どもたちが操作して体験的に学ぶことができるような仕掛けを用意。子どもたちは、その中から、自分に合うものを選び、答えを探していく中で、社会科の本質的な問いへ近づいていくのです。
「教員は、知識を単に教えて覚えさせるのではなく、子どもが思わず考えたくなり、調べる必要を感じ、その過程で教科の知識や概念に出合うように単元開発をしています」(山下氏)
子どもたちは、1人で取り組んでも、友達と相談しても、必要に応じて教師に尋ねてもかまいません。学ぶ場所も、教室だけではありません。校内には、オープンスペース、畳のある場所、可動式家具でつくられた小さな空間などが用意されており、必要に応じて自分が集中できる場所を選びます。
大切なのは、自分に合う学び方や場所を、子ども自身が選べることです。
そして、教師の役割を、一斉に正解を「教える人」から、子どもの学びが生まれる環境を整える「設計者」へと転換し、単元全体で設計する視点を持つことで、個々の児童に寄り添う余裕が生まれたのです。
学び方を変えたら、下位層の学力が大幅に伸びた
こうした学びは、勉強が得意で、自分から動ける子どものためのものだと思われがちですが、奈須氏の見方は逆です。
「学力が低いと言われてきた子は、いい教材と出会えていなかっただけなのです」
学びにくさの原因を、子どもの能力や努力不足だけに求めない。その子に必要な時間が与えられているか。理解しやすい教材や道具が用意されているか。自分に合う方法を選べるか。奈須氏は、個別最適な学びは「原則的には特別支援教育に通じる発想」だと説明します。


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