「ベッドで安静にしているだけならば、自宅より病院のほうが安心と思う人も多いのですが、そもそも寝ていなければ治らない病状なんて、実はわずか。入院生活で基礎体力を減退させてしまい、病気が落ち着いても身体が衰えて自宅で暮らせなくなり、退院のために施設を探すというケースもよくあります。いったいなんのための入院だったのだろうと思います」
この“入院あるあるコース”をたどるきっかけは、冒頭で書いたような瀕死の状態の救急搬送だけではない。高齢者がすぐに入院させられる典型として、発熱や転倒・骨折がある。
治ったら退院して元通りなのでは?と思われるかもしれないが、高齢者はそうはいかない。萬田氏の患者の実例を紹介しよう。
骨折から1カ月で「看取りか胃ろうの2択」の状態に
家族と同居する98歳の女性Kさんは身の回りのことは自分ででき、歯は全部自前で食欲旺盛。家族曰く「食い気の人」だった。正月に室内でつまずいて転倒し、大腿骨を骨折。折れた骨が接合するまで入院して安静にすることになった。
入院6日目。Kさんはせん妄(※高齢者が入院したときによく起こる一時的な意識障害のこと)になり、夜中に「家に帰る」といって起き出し、ベッドから落下。大腿骨は完全に折れてしまい、手術が決まった。
だが、Kさんは手術待機中に誤嚥性肺炎になってしまい、高熱にうなされて生死の境をさまようのである。手術はもちろん中止。内視鏡検査の結果、誤嚥性肺炎の原因は声帯の機能麻痺によるものと診断された。
Kさんは食べたら死んでしまうという状態で、このまま絶食で点滴だけならば余命は1~2週間、寝たきりになるだろうが胃ろうをすれば延命が可能。主治医は家族に絶命を待つか胃ろうをするか、どちらかを選んでほしいという。


※ログイン後、コメント入力が可能です。