「お客様に『この機能で、この価格なら取り入れてみたい』と思ってもらえることこそが、商品の真の価値だ」。会場に集まった大勢の報道陣を前に、商品企画の担当者は自社商品で目指す方向性をそう強調した。
カジュアル衣料チェーンのしまむらは9月16日、さいたま新都心駅近くの本社で今秋冬シーズンに投入する新商品の発表会を開いた。創業は1953年、今や国内屈指の知名度を誇るカジュアル衣料の大手だが、報道陣向けに商品発表会を開いたのはこれが初めてだ。
「ロードサイドにある安いだけの衣料チェーン」「よく言えば堅実、悪く言えば攻め気がない」――。地方、郊外を中心に着実に店舗数を積み重ね、低価格を強みに拡大してきたしまむらだが、安定成長の裏側ではそんな評価も付きまとっていた。ところが今、従来のイメージを覆すような施策を相次いで打ち出している。
インフレ下で変わり始めた消費者の目
この日の発表会で紹介されたのは、10年以上前から展開しているプライベートブランド(PB)「CLOSSHI(クロッシー)」だ。
最近は同社基準で通常商品よりも2倍の冷たさを感じるという「超COOL」や、何度洗っても服の形が崩れにくい「ヘビロテ」、着るだけで体の姿勢を整える「活き活きラボ」など、機能性を高めた中価格帯の商品を相次いで投入している。
2026年の秋冬シーズンには、発熱性に優れる素材を使用した「FIBER HEAT」の商品ラインナップを強化するほか、着用しているだけで筋肉疲労を和らげる効果があるリカバリーウェアも新たに発売する。機能性を高めたぶん、通常のしまむら商品よりも少しだけ価格が高くなるが、着心地や使用感について消費者から高い評価を得ているという。
自社で企画・生産した定番品を多く取り揃えるユニクロなどと違い、しまむらは創業以来、メーカーや商社から商品を仕入れて販売する手法をメインにしてきた。原則として返品を行わない代わりに多種多様な商品を少量ずつ安く仕入れ、絶えず売り場に新しい商品を送り込んでいくことが同社の大きな特徴だ。
しかしここ数年でインフレが進み、実質賃金も徐々に上がり始めたことで、消費者の商品選びが変わり始めている。単純な安さや目新しさだけでなく、肌触りや耐久性、速乾性、さらに体への負担にもこだわった定番商品に高い人気が集まるようになり、そうした商品は多少値上げしてもリピート買いが続く傾向にある。
商品の企画や販売を担当する中平貴士取締役上席執行役員も「消費者の目が年々厳しくなっている。安いだけではなかなか厳しい。お客様に欲しいと思ってもらえるような価値を伝えていくことがこれからは重要だ」と説明。手ごろな価格帯や豊富な品揃えは維持しつつ、今後は機能性を高めた自社独自のPB商品を新たな成長柱に据えて商品戦略を進めていくという。
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