DCブランドについて深掘りしていくとともに、市村氏が注目したのは当時のファッション雑誌だった。かつて母が愛読していた『Olive』に始まり、徐々に『POPEYE』や『MRハイファッション』など男性向けのファッション雑誌を読み耽るようになったという。
ファッション雑誌はアパレルのトレンドだけでなく、当時の若者たちの美意識をも伝えていた。
「私が惹かれたのは、一言で言えば『センス』と『ダンディズム』です。当時の人々の着こなしや生き様、ライフスタイルの格好よさに、紙面越しに魅了されていきました。
実際に当時のDCブランドで活躍していたあるデザイナーさんにお会いした際も、そのダンディズムに圧倒されましたね。クロムハーツを身につけ、ステッキを携え、自らデザインした服を着て濃いサングラスをかけていらっしゃる。でも、それが威圧的でオラついてるのとは違って、所作がとても格好いいんです。お会計の立ち振る舞いとか、物事を選ぶ基準とか、下手にうんちくを語らない圧倒的な品性がある。その凄みに、心を奪われてしまいました」
「じゃない方」をディグる。DCブランドへの傾倒
そのような市村氏がDCブランドへの傾倒を深めたのが、大学に入学してからのアルバイトでの経験だった。信州大学繊維学部のキャンパスは上田に置かれているが、1年次のみ松本キャンパスで学ぶ。アルバイト先に選んだのは、松本パルコ(現在は閉店)に店舗を構えていたDCブランド・MEN'S BIGIの系列店だった。
「実は『どうしてもDCブランドで働きたい』といった大層な理由ではなくて、純粋にアパレルの販売員としてアルバイトがしたかったんです。ただ、その店舗で過去のカタログを見せていただいたりもして刺激を受けていました。
MEN'S BIGIには、かつて前年比200%以上の売り上げを記録した伝説的なスタジャンがあり、私が働き始めたのがちょうどその復刻モデルが出たタイミングだったんです。『これはいったいどんなアイテムなんだろう』と興味を持ち、当時のオリジナルを古着で探して買ってみたのが、最初にメンズのDCブランドに深く踏み込んだきっかけでした」
特に惹かれたのは、現在もファッション界を牽引するブランドではなかった。むしろ、現在ではあまり語られることのない、より個性的なブランドに心奪われるようになっていた。
「海外のブランドの話になってしまいますが、私が服を好きになった当時はアーカイブブームで、Maison Margiela(メゾン マルジェラ)やRAF SIMONS(ラフシモンズ)などの有名どころの値段が100万円、200万円と急騰していた時期で、中高生ではとても買えません。なので、その頃はずっと『王道じゃない方のブランド』を必死でディグって(掘り起こして)買い集めていて、それが現在に連なる一つの原点になっていると思います」


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