かなり尖っていて、ニッチな品揃えだ。このような特異な空間に初めて足を踏み入れた時、率直にそのような感想を持った。店主はきっと、当時の熱狂を知る人物であるのだろう……そう思いきや、店舗奥から姿を現した人物は驚くほど若い。自らDCブランドのアイテムを着こなし、柔和な笑顔で客を迎えるその人物こそ、店主の市村修蔵氏だ。2002年生まれの24歳。前述の信州大学繊維学部に在学中からDCブランドの収集を始め、24年に実店舗をオープンさせた。
80年代の熱狂的なDCブランドブームはおろか、90年代初頭のバブル崩壊すらリアルタイムで経験していない。「失われた30年」のなかで生まれ育った若者が、なぜ半世紀近く前の日本のアパレルにこれほどまでの偏愛を注ぎ、上田の地で専門店を営んでいるのか。
その真意を聞くべく、現在SNOBのポップアップが開催されている「TIGER MOUNTAIN」(東京・虎ノ門)を訪ねた。
「オリーブ少女」だった母が語った、熱狂の80年代カルチャー
「私とDCブランドの根本的なルーツを辿ると、筋金入りの雑誌『Olive』の愛読者、いわゆるオリーブ少女だった母の影響が非常に大きいです」
他の年代やブランドが数多くある中で、なぜDCブランドなのか。率直な疑問を投げかけると、市村氏はこのように話す。
「私が服を好きになり始めた頃、新しくインプットした知識を誰かにアウトプットしたくてたまらなかったのですが、同世代の友達には話せる相手がいませんでした。そこで母に『当時こういうブランドがあったんだよ』と話してみたところ、母は『私は『Olive』をリアルタイムで読んでいた』というところから始まって、当時の神戸・旧居留地にあったブランドやショップの話や20代の若者たちの熱気など、当時のカルチャーについて生き生きと話してくれたんです」
中学3年生の頃からファッションに興味を持ち始め、日夜ファッションについて学びながら地元である神戸の古着屋に通い詰め、手元と着心地で実際に確かめる。そんな市村氏にとって最も身近なアウトプット相手が、自身の母であった。そして、母の語る当時のファッションカルチャーは、徐々に市村氏を魅了していった。
「母はオリーブ少女としての実体験以外にも、当時大阪のナビオ阪急(現:HEP NAVIO)や大丸周辺を闊歩していた、全身黒のアイテムを纏った『カラス族』をリアルタイムで見た話などもしてくれました。そうした生々しい体験談を聞くうちに『なんて格好いい時代だったんだろう』と猛烈に憧れを抱くようになりました。もともと凝り性でオタク気質なところがあったので、そこから自分自身でも当時のカルチャーを貪欲に掘り進めていきました」


※ログイン後、コメント入力が可能です。