有料会員登録 東洋経済オンラインとは
ビジネス

「メモ禁止」目で技を盗んだ2カ月…廃業する「街のパン屋」の蒸しパンを、大手マックスバリュが"パートさんごと"継いだワケ

8分で読める
平日700〜800個、休日は1200個売れるという「熱海ほていやの蒸しパン」
平日700〜800個、休日は1200個売れるという「熱海ほていやの蒸しパン」。廃業する「街のパン屋」の蒸しパンを、なぜ大手スーパーが継いだのだろう(写真:筆者撮影)
  • 谷口 素子 取材ライター・コラムニスト
2/6 PAGES
3/6 PAGES
4/6 PAGES
5/6 PAGES

2カ月後、厳しい修業をなんとか乗り切り、引き継ぐためのレシピは完成した。いよいよ名物の蒸しパンは、マックスバリュ東海の熱海店で作られることになるのだが……ほていやの味を出すのは、そう簡単ではなかった。

木製の蓋がないと作れない

ほていやで使用していた機械、道具、材料の仕入れ業者もそのままマックスバリュ東海が引き継いだ。だが、いちばん重要な引き継ぎは、物ではなかった。

ほていやで働いていたパート従業員も、家庭の事情で勤務が難しい一人を除いて全員そのまま雇用したのだ。レシピと道具だけを買うのではなく、味を作っていた職人の思いごと引き受けた。2カ月の修業で増井さんたちが持ち帰れたのは、断片的な情報でしかなかったからだ。

だから、蒸しパンの味は消えなかった。

けれど、道具に関しては問題もあったという。大手スーパーには衛生管理のルールが定められている。たとえば木製のまな板は、衛生上の理由で使うことが許されていない。そのため、プラスチックのものに替えなければならなかった。

ただ、蒸しパンを作るための蒸し器に使う木製の蓋だけは、どうしても代わりのものがなかった。代用しようとしたホーローの蓋は、水分を吸わない。蒸すと蓋に水滴がつき、それが蒸しパンに流れ落ちて水っぽくなり、ベチャっとしてしまう。

木製の蓋は外せない。これがないとほていやの蒸しパンは作れない。増井さんたちは衛生管理を徹底することを申し出て、例外を認めてもらった。

6/6 PAGES

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

ビジネス

人気記事 HOT

※過去1ヶ月以内に配信した記事の閲覧数