
ところが、ごま油の試作生産が開始された直後の21年2月1日、軍事クーデターが発生し、社会と経済は大きく混乱しました。
「政変によるさまざまな影響はありましたが、当時、社員はまだ3人だけでした。幸い、工場周辺では大きな衝突もなかったため、規模を抑えながら試験生産を続けていました」
その後も試験生産を重ね、ミャンマー国内で食品を流通させるために必要なFDA(食品医薬品局)の認可を取得し、本格的な販売を開始しました。
「MIYAKO」が生産・販売しているのは、ごまを煎ってから搾る「焙煎ごま油」と、煎らずに低温でゆっくりと圧搾する「エキストラバージン・ごま油」の2種類です。
輸入規制の強化が逆に国産品に目を向けることに
一方、ミャンマーで伝統的に造られてきたごま油は、一般にごまを焙煎せず、蒸気で温めてから搾るもので、日本の焙煎ごま油のような香ばしさはありません。そのため、豊かな香りが特徴の「MIYAKO」の焙煎ごま油は、当初はなかなか受け入れられませんでした。
これまで、スーパーマーケットなど近代的な小売店で販売されていたごま油は、海外からの輸入品が中心でした。ところが、クーデター後に輸入規制が強化され、海外からごま油を輸入することが難しくなりました。
「軍事政権による輸入規制の強化は、逆説的に事業の追い風となりました。輸入ごま油が減り、残った商品の価格も上昇したことから、それまで取り合ってもらえなかったミャンマー最大手の小売・卸、シティマート・ホールディング社をはじめ、複数の取引先から『商品を売ってほしい』と声がかかるようになりました」
食品展示会などで試食販売を重ねるうちに、「香りが良い」という声が聞かれるようになりました。市橋さんによると、試食をきっかけに購入する人も徐々に増えているといいます。


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