2026年8月31日、防衛省の来年度予算の概算要求が閣議決定された。今回は要求額が約8兆9000億円で史上最大の予算額と新聞などでは報じられて話題になっているが、その額は実はさらに大きく、10兆円をはるかに超えるだろう。
その差額は「事項要求」という金額を明示しない項目である。今回はその「事項要求」が乱発されて概算要求の全体像が見えなくなっている。この「事項要求」は防衛予算を不透明化し、文民統制の根幹を脅かす。
防衛費10兆円をもたらす「事項要求」の怪
事項要求とは事業の必要性は認めるものの、詳細な設計や価格の積算がまだ固まっていない段階や、これからの政策方針の決定に合わせて金額を変動させる必要がある場合に用いるとされている。これは防衛省以外の官庁でも使用されている。「事項要求」は1960年代のシーリング(予算の要求基準)制度導入期から、予算編成上の「例外措置」として始まった。
だが第2次安倍晋三政権から事項要求は毎年のように使われ「例外」ではなくなり、コロナ禍を契機に、各省は事項要求を多発するようになった。21年度当初予算では、概算要求総額は1兆2000億円を上回った。
今回はとくに安全保障関連の3文書(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)の改定や、防衛大綱の変更といった大きな政策見直しが控えており、異常なほど多くの項目で使用されている。防衛省の概算要求の資料、「防衛力の変革に向けた予算 令和9年度概算要求の概要」には、このように書いてある。
現在の防衛力整備計画は23~27年度を対象としており、これがまだ生きているため、現行計画部分(8.9兆円分)以外は事項要求にならざるをえないためだという。また今回の概算要求を見る限り、その現行計画内の部分まで使用されている疑いもある。
例えば、現在の計画分のはずの装備も事項要求になっている。例えばC-2輸送機は期間中に6機が調達されることになっているが、現状は2機にすぎない。ところが要求全額が「事項要求」である。また同様に調達数が決まっているF-35戦闘機、哨戒艦などの調達も軒並み全額が「事項要求」となっている。
潜水艦も計画中6隻のうち、これまで調達は5隻であり、後は1隻だ。これまた全額「事項要求」である。無人機は調達数量も決まっていない。だがこれまた「事項要求」が多用されている。
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