退職を機に、市橋さんの農業への思いは、人との縁によってふたたび動き始めます。
最初のヤンゴン駐在中だった96年頃、市橋さんは、京都の老舗ごま油メーカー・山田製油(京都市)の3代目である山田康一社長とともに、ミャンマー各地のごま産地を巡りました。2人は意気投合し、市橋さんの日本帰任後も取引などで交流を重ねながら、長年にわたって親交を深めていきました。
京都の老舗ごま油メーカーとの邂逅
初めての出会いから約25年。市橋さんが退職の挨拶に山田社長を訪ねた際、農業の思いを伝えたところ、山田社長からミャンマー産のごまを使ったごま油づくりを提案されました。
「私はすっかり忘れていたのですが、当時、2人で『いつか一緒に事業をしよう』と語り合っていたそうです(笑)。『世のため、人のため』を社是とする山田社長となら、ミャンマーのために何か貢献できる、お役に立てる事業ができるのではないかと思いました」
山田社長という心強いパートナーを得たことに加え、ミャンマーが世界有数のごま生産国(注:24年の世界のごま生産量は、FAO〈国連食糧農業機関〉によるとインドに次ぐ2位)であることも、ごま油づくりを後押ししました。
ミャンマーで生産されたごまの多くは、付加価値が付けられないまま原料として国外へ輸出されています。一方、国内では安価な輸入パーム油が普及し、昔ながらのごま油の良さが忘れられつつありました。
「将来はごまだけでなく、さまざまな農産物に付加価値を付け、商品化していきたい。その出発点として、ごま油を選びました」
山田製油からごま油の生産に必要な機械に加え、長年培ってきた技術やノウハウの全面的な提供を受けることになりました。
そこで市橋さんは、95年のヤンゴン駐在時代から約25年にわたって取引を続けてきたミャンマーの大手穀物商社、チュンシュエワー社(Kyun Shwe War Co.,Ltd.)のミンチユー社長に構想を伝えたところ話は順調に進み、3社による合弁会社の設立が決まりました。


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