現在1.0%の政策金利は、いったい何%まで上がる可能性があるのでしょうか。それを考えるうえで一つの目安になるのが、「中立金利」という考え方です。中立金利とは、景気を後押しすることも、反対に景気を冷やすこともない金利の水準です。
先ほどの車のたとえでいえば、アクセルもブレーキも踏んでいない状態です。現在の日銀がアクセルを少しずつ緩めているとすれば、どこまで緩めればアクセルを踏んでいない状態になるのか。その目安となるのが中立金利なのです。
では、日本の中立金利は何%なのでしょうか。実は、中立金利は一つの数字に決まっているわけではなく、推計の方法によって幅があります。ただ、過去に日銀が公表した分析では、物価上昇の影響を除いて考えた場合、日本の景気を後押しすることも、冷やすこともない金利は、複数の方法による推計を総合すると「0%程度」とされていました。
物価上昇はどこまで続いていくのか
そこで、この0%を出発点に考えてみましょう。実際の中立金利を考えるときには、これに「これから物価がどのくらい上がりそうか」という見通しを加える必要があります。たとえば、今後の物価上昇率が2%程度と予想されるなら、出発点とした0%に2%を加えて、中立金利は2%程度と考えることができます。中立金利を2%程度と考えるなら、現在の1.0%という政策金利は、まだ景気を後押しする側にあると考えることができます。
ただし、ここでは今後の物価上昇率を2%として計算しました。本当に、これからも2%程度の物価上昇が続くのでしょうか。その参考になる指標の一つが、「ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)」です。通常の国債と物価連動国債の金利の差から計算され、将来の物価上昇に対する見方を知る手掛かりになります。財務省のデータによると、2026年8月20日時点の10年物BEIは1.969%です。足元では、ほぼ2%の水準となっています。
現在は中東情勢を背景とした原油価格の上昇などが、物価を押し上げています。日銀も、原油高によって物価上昇率はいったん2%をはっきり上回るものの、その影響は次第に弱まるとみています。こうした点を踏まえると、現在のBEIがほぼ2%だからといって、今後もずっと2%近い物価上昇が予想されていると考える必要はないでしょう。


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