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今回登場するのは、Aさん。父は東大出身、母は専門学校卒の専業主婦という家庭に生まれ、東京23区内で育った。
小3からSAPIXに通い、成績は常にトップクラス。名門私立の中高一貫校を経て、東京大学経済学部に現役合格した。
ここまで書けば、この連載ではおなじみの輝かしい経歴である。ただ、今回彼に話してもらったのは、輝かしくない部分の話だ。
Aさんは小学生の頃、親の財布から金を盗んでいた。それも一度や二度・少額ではない。月5000円〜1万円という単位で、繰り返していた。
頭がいい子供は悪いことをしない、というわけではない。むしろ頭がいいからこそ、バレない盗み方を考え、バレたときの言い訳まで用意する。Aさんの話は、そういう子供を前にしたとき、親は何ができて、何ができなかったのかという話でもある。
SAPIXのトップクラスで、クラスの中心にいた小学生時代
Aさんは、小さい頃からテストで良い点が取れる子供だった。小3からSAPIXに通い始めると、成績はすぐに上位に食い込んだ。クラスでも中心的人物で、勉強ができて、友達もいて、教師受けも悪くない。外から見れば、どこに出しても恥ずかしくない子供だった。
家庭の中だけが、少し違った。父親は東大出身の仕事人間で、家にあまりいない。教育を担うのは専業主婦の母親で、彼女は息子の勉強に熱心だった。構造としてはよくある家庭である。よくある家庭の、よくある息子が、小学5年生の頃、盗みを始めた。
母親の財布から盗もうとしたが、これはバレそうなので断念。だが、父親の財布からは、あまりバレない。家にいない父親は、自分の財布の中身を正確に把握していない。息子はそこに気づいた。
「欲しいものがあったわけではないんです。親に対する反抗心みたいなもので。塾の友達にアイスを奢ったりしていました」


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