盗んだ金を使って何かを買うということはせず、友達と遊ぶお金に消える。盗みで得たものを自分に使わず、他者に渡して回る。そこには、承認への飢えと、親への攻撃がない交ぜになっている。
「勉強させてくる親への、唯一の反抗だったというか。だから勉強のことでガミガミ言われたら盗む、みたいな相関関係が、今考えるとあった気がします」
親にバレた→母は泣き崩れ、父は激昂
ガミガミ言われた分だけ、財布から抜く。成績の良さと盗みの頻度は、彼の中で反比例ではなく、正比例していた。勉強で応えるほど圧力が増え、圧力が増えるほど盗んだ。
「今日大事な話があります」
小6の11月。受験まであと2カ月という時期に、携帯に一通の連絡が届いた。
「今日大事な話があります」
うわ、これは絶対あれだな、と思った。バレたか。どうしよう。家に帰りたくない。それでも帰るしかない。
そう思って帰ると、案の定、めちゃくちゃに怒られた。母親は泣き崩れ、父親は激昂した。「うちの子が犯罪をするなんて」。想定どおりの展開で、どうしようもない。そこでAさんは、自分でも不思議なことに、逆ギレした。
親の財布から盗んでも罪に問われにくいことはネットで調べて知っていた。そして、口をついて出たのは、こんな言葉だったという。
「成績がいいんだから、多少そういうのがあってもいいじゃないか」
「だいたい、あんたら僕のこと愛してないだろ」
本当にそう思っていたわけではないはずだ、と彼は振り返る。だが、ある事ない事、口走ってしまった。両親にとって、それは衝撃だった。うちの子が、こんなに反抗するんだ、と。
成績優秀でクラスの中心で、親の言うことを聞く子供だと思っていたら、その子供は両親の目の前で、犯罪行為に近いことに対して逆ギレした。


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