それを機に、飲み放題(8000円)のほかに料理付き飲み放題のコース(1万5000円~2万円。その日に手に入った食材による)も用意した。子どもの頃、食べ物に苦労した羊かんさんは大人になってからすっかりグルメになり、味にはうるさい。そこで、行きつけのそば屋で働いていた料理人に声をかけ、手の込んだ本格的な料理を提供するようになった。アメリカのDJのように、その料理を目当てによーかんちゃんに通う人もいるのだ。
お店には、所狭しと色紙が貼られていて、たくさんの著名人が来店していることがわかる。なぜ、著名人に愛されるのか?
スナックといえば、マスターやママ、ホステスとの「会話を楽しむところ」というイメージがある。しかし、よーかんちゃんは違う。このお店では、カラオケタイム以外も羊かんさんの独壇場で、お客さんは羊かんさんのトークを楽しむ。
例えば、羊かんさんは有名、無名を問わず来店したお客さんのエピソードをしっかり覚えていて、笑い話として披露する。それがイメージを悪くするような暴露話ではなく、聞いているほうも、言われたほうもイヤな気持ちにならないような内容だから、著名人も一般人も肩ひじ張らず楽しめるのだろう。
「あのお客様が来てこういう話をしたって、そのときに聞いたことを題材にして、ほかのお客さんにまた面白おかしく話すんです。お客さんが多い時はマイクを持って席をまわりながらそうしているから、皆さん、初めましての時でもそのうちにお互いにどういう人かがわかるんですよね」(早苗さん)
マスターとしての気遣いと矜持
羊かんさんは、ただマシンガンのように話をしているわけではない。初めて来店したお客さんの名前を一度聞いただけでおぼえ、会話のなかに織り込む。実はこの取材も、ひとりで向かうのが不安だったため(初スナックでした)、友人ふたりと訪ねたところ、羊かんさんは当たり前のように僕ら3人の名前を口にしながら話をしていた。
さらに羊かんさんは、目の前のお客さんを笑わせながら、全方位にアンテナを張り巡らせている。取材の日は暑く、インタビュー中、僕がタオルで汗を拭いていたら、すぐに「ちょいと、クーラーの温度下げてくれる?」と早苗さんに声をかけていた。また、インタビューの間、僕が質問をして羊かんさんが答えるという流れだったため、黙って聞いている友人ふたりにも何度となく話を振っていた。


※ログイン後、コメント入力が可能です。