そして、会話のところどころに盛り込むギャグ。例えば、鶯谷のラブホテルの話題になれば、「おれはこのへんはやめて、もっと時間に正確なホテルに行ってと言ったんだ」。僕らの脳内にはてなマークが浮かんだところで、「時間に正確なホテル、帝国ホテル」。決して一方通行ではなく、話の内容に沿ったギャグを瞬時に繰り出すのは、誰にとっても簡単ではない。それを約2時間の取材中、ずっと続ける87歳は並大抵ではない。
その姿からは、よーかんちゃんに来た人は誰ひとり退屈させないというマスターとしての気遣いとプロの矜持を感じた。32歳で芸人を引退した羊かんさんだが、40歳にして手に入れたスナックは、体ひとつでお客さんと向き合う唯一無二のステージになったのだ。自分ですべて買い集めたというおもちゃや小物も、羊かん色にステージを彩る。だからこそ、「この商売、生まれ変わってもやりたい」と感じるのだろう。
常に燃えてなきゃダメ
それにしても、である。何度も書くように87歳。疲れを感じることはないのだろうか?
「酒を飲むと元気になっちゃうんだよ。毎晩飲んでるから、自分がそんなに年を取ったとは思ってないね。あと、疲れとかストレスも発散できるんだよね。喋るから、ずっと」
――お客さんと話すのが好きなんですか?
「好きっていうか、喋らないとお客さんに調子悪いの? って言われちゃうからさ。いつも元気に喋らなきゃいけないんだよ。羊かんちゃんから元気もらったとか言われるとさ、そう思ってくれるなら俺も頑張んなきゃと思っちゃう。ただそれだけさ」
――お話をしていて、87歳と思えないというか、脳の回転がすごく速いと感じました。
「それはね、鍛えなきゃいけませんね。例えば、おれは目の前のお客さんと話していても、隣のお客さんが喋っていることをぜんぶ聞いているわけ。そうやっていつもなにかを考えてね。ボーっと生きてちゃダメ。常に燃えてなきゃダメなんだよ」
早苗さんによると、羊かんさんは普段、本も新聞も読み、テレビもよく観るという。そうやってインプットを欠かさず、お店では脳をフル回転させている。それが「燃えている」ということなのだろう。今も営業を終えた後、お客さんや友人、知人と飲みに行き、「あんまり寝てない」という羊かんさんは、ニヤリと笑った。
「寝るのは後で。どうせ永眠するんだから」


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