79年の開店当初は深夜営業を取り締まる法律がなかったため、月曜から土曜まで週6日、17時から朝の4時まで店を開けた。元芸人の羊かんさんは顔が広く、お客さんがよく入った。4時に閉店した後は、残っていたお客さんと食事に出るのが常だった。
各界の大御所が来店するようになったきっかけは、歌舞伎の名優、十八代目 中村勘三郎さん。羊かんさんと妙に馬が合った中村さんはお店に通い詰め、親しい人たちを連れてきては羊かんさんに紹介した。誰もが名を知るような著名人も少なくなかった。
そのうちのひとりが、アナウンサーの安住紳一郎さん。その日、中村さんは言った。
「今度、『ぴったんこカン・カン』に出るんだ。羊かんちゃん、俺と一緒に出てくれよ」
突然の誘いに恐縮した羊かんさんは、「いやいや、ごめんなさい。 俺はそんな器じゃないから」と、その場で断った。そこで、中村さんが言い放つ。
「安住さん、羊かんちゃんが嫌だって言うなら、俺も出ないよ」
ここまで言われて、断ることはできない。羊かんさんは中村さんと一緒に、3度も『ぴったんこカン・カン』に出演した。
ふたりの友情は、プライベートにも及んだ。
「ひとり10万円はかかる銀座の高いクラブに連れていってくれてね。ドンペリをパーンッと頼むんだ。それで、お会計のときは、お金も払わずにサッと出ていくの。誰かが後で払うんだろうけどさ、そういう経験をたくさんさせてくれたのが、勘三郎なんだ。人間臭くてね。あんな人は、ほかにいないよ。ほんとに世話になった」
カラオケタイム以外も独壇場
中村さん以外にも、よーかんちゃんに足繫く通う著名人は多い。アメリカに住む世界的なDJは、来日するたびに貸し切りで予約をして、屈強なガードマンを連れてやってくる。お店で作る唐揚げが好物で、大皿いっぱいの唐揚げをペロリと平らげるそう。
もともとは、料理を出していなかった。しかし銀座や新橋、六本木で飲んだ後、二次会で鶯谷まで足を延ばすお客さんも多く、あるとき、ひとりのお客さんから「ここで料理を作ってくれないかな。 そうすれば1軒で終わるんだけど」と言われた。


※ログイン後、コメント入力が可能です。