「トラウマなんですよね」
仕事で厳しく叱責された経験や、受験での失敗、失恋、子どもの頃の苦い思い出などを語るとき、このような言い方をすることがある。だが、そもそもトラウマとは、いったい何なのか。長年、精神科医としてトラウマ治療と当事者支援の第一線に立つ白川美也子さんに話を聞いた。
トラウマという言葉の起源
「『トラウマ』という言葉はもともとギリシャ語で『傷』を意味し、19世紀半ばまでは主に体に負った傷を指していました。それが、19世紀後半の神経学や精神医学のなかで『心の傷』という意味でも用いられるようになり、現在では、心理的な外傷を示す言葉として使われるようになったのです」と白川さんは説明する。
■つらい体験とトラウマの関係
つらい体験はなぜトラウマとなって、いつまでも記憶にとどまるのか。その理屈を白川さんは、「バネ」にたとえる。
「誰でもストレスになるようなつらい体験をしたことがあると思いますが、その記憶の多くは時間とともに薄れていきます。なぜなら、ストレスというのは外圧によって一時的にバネがへこんだ状態であり、時間が経つと徐々に元の状態に戻るからです」
だが、トラウマになるような強烈なストレスの場合、バネはへこんだまま元に戻らないため、いつまでも記憶としてとどまる。そして、何らかのきっかけで思い起こす。


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