その際、“当時と同じような生々しい感覚”に襲われるが、その理由について白川さんは「トラウマになった記憶は冷凍保存のようなもの」と説明する。
「トラウマになるような体験は非常に強く、そのときの状況や感覚、感情ごと記憶されます。それが何かをきっかけに解凍されると、何年、何十年経っても、当時の出来事が今起きているかのように蘇り、言葉にならないほどの強い苦痛を引き起こすのです」
このような現象を「フラッシュバック」という。
■トラウマとPTSD
こうしたトラウマによって心身の健康が損なわれた状態が、PTSD(心的外傷後ストレス障害)だ。
具体的には、フラッシュバックや悪夢などの「再体験」、つらい体験を想起させる人や場所を避ける「回避」、イライラする・眠れない・集中できないといった「過覚醒」、「ネガティブな認知・気分の変化」などが1カ月を超えて続き、日常生活に大きな支障をきたしている場合に、診断される。
PTSDはまた先に挙げたような精神面だけでなく、動悸やめまい、消化器症状、慢性的な痛みや疲労など、さまざまな身体症状と関連することもわかっている。
注目される現代の「トラウマ」
日本では1995年の阪神・淡路大震災で広く注目されたPTSDだが、アメリカ精神医学会が、精神疾患の診断基準「DSM-Ⅲ」に正式に加えたのはそれより前、1980年のことだ。
背景には、ベトナム戦争から帰還した兵士と性暴力の被害者に共通した心の不調が見られることが明らかになってきたことがある。いずれも「ショックトラウマ」と呼ばれるような、命の危機や激しい恐怖を体験したことで起こるトラウマを経験していた。


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