ミュンヘン工科大学のハバースらはメタボライト・スチール(栄養の横取り)という興味深い説を紹介しています。
筋肉が大きくなろうとするとき、その材料として大量の栄養素が必要になります。筋肉を1kg増やすには、大量のアミノ酸や、それを作るためのエネルギー(糖分など)を血液中から取り込まなければなりません。つまり、大きく成長しようとしている活発な筋肉は、血液中の余分な糖や脂質をどんどん「横取り」して、自分の材料にしてしまうのです。
その結果、脂肪細胞に行くはずだった栄養が筋肉に回され、脂肪は縮小し、血糖値は下がるというわけです。ハバースらの分析では、人間において筋肉量が約1.9~3.3%増加すると、脂肪量が約4.1%減少し、空腹時血糖値が約5.8%も低下することがわかっています。
筋肉は単なる「動くためのエンジン」ではありません。それ自体が巨大な「糖分の貯蔵庫」であり、エネルギーを浪費する「代謝臓器」なのです。
科学が導き出した「糖尿病対策の方程式」
ここまで、筋トレが糖尿病改善にいかに効果的かを見てきました。では、具体的にどのようなスケジュールで進めれば良いのでしょうか。最新エビデンスが示す戦略は、次の方程式に集約されます。
自分を律し、適切な負荷をかけるには、環境を変えることが成功への第一歩です。家トレで効果が出なくても、ジムなら結果が変わるかもしれません。
多くの研究が示唆するベストな頻度です。ワンらの解析で、週3回の頻度で行う筋トレが、空腹時血糖値やHbA1cを最も効果的に低下させることが示されました。週1~2回では効果が弱く、まずは週3回を目指しましょう。
「糖尿病があるのに、重い物を持っても大丈夫?」と不安になるかもしれませんが、ベルグらの研究が示したように、血糖値改善に最も効果的だったのは筋肥大トレーニングでした。これは、一般的に「8~12回持ち上げるのが限界」という重さで行うトレーニングです。回数を多くこなすだけの軽い運動(筋持久力トレーニング)では、HbA1cの明確な改善は見られませんでした。
筋肉は脂肪より重いため、筋トレを始めると体重が変わらないこともあります。しかし、体内では炎症が治まり、血糖値が下がり、代謝が改善しています。体重計の数字よりも、血液検査の数値を信じましょう。
筋トレは、あなたの身体が持っている「血糖値を下げる力」を呼び覚ますスイッチです。薬に頼る前に、あるいは薬と並行して、自分の筋肉という頼れる味方を育ててみてはいかがでしょうか。



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