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ライフ #ルポ 血と縁 生殖医療--新しい家族を求めて

【精子バンク】法的にグレーゾーンで密やかに行われてきた精子提供だが、日本人の想像を超えたネットワークが…

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男女カップルを対象とした体外受精や顕微授精、凍結胚移植などの「生殖補助医療(ART)」が急速に普及している。2023年には全出生児の約12%、8万5048人がARTで誕生(日本産科婦人科学会)。少子化対策で、22年に医療保険が適用されたことが急増の背景にある。
一方、保険が適用されない生殖医療も行われている。例えば、夫が無精子症で第三者から提供された精子を妻の子宮に注入する「非配偶者間人工授精(AID)」や、提供精子・提供卵子を使った体外受精、子宮欠損の妻と夫の配偶子を体外受精させて親族(妻の母、姉妹)が代理母となる「代理出産」などが挙げられる。すでに、AIDで生まれた子どもの数は2万人に達したともいう。
だが、こうした生殖医療は法的に未整備な領域が広く、制度的には曖昧な状態に置かれている。生まれてきた子どもの「出自を知る権利」や、告知の葛藤、親子関係を維持する難しさなども横たわる。私たちは生殖医療とどう向き合っていけばいいのか。
著書『炎と水 中村哲と名もなき人たちの旅』で第48回 講談社 本田靖春ノンフィクション賞を受賞した作家、山岡淳一郎氏によるデジタル特集【ルポ 血と縁 生殖医療――新しい家族を求めて】の第2回は、法的に空白なグレーゾーンにある「精子バンク」を運営する伊藤ひろみさんの歩みにフォーカスする。

その「精子バンク」は、JR東京駅の八重洲口から歩いて4分ほどの10階建てオフィスビルの1階に入っていた。2026年7月21日の昼どき、私は、腹をすかせたビジネスパーソンが行き交う表通りを横切って小路を歩き、「プライベートケアクリニック東京(PCCT)」の玄関先に立った。呼び鈴を鳴らし、精子バンク部門マネージャーの伊藤ひろみさんに面談を求めた。同クリニックはもともと性感染症の専門診療機関で、不妊カウンセラーの伊藤さんは、併設された精子バンクの実務を仕切っている。

プライベートケアクリニック東京で精子バンク事業を担う伊藤ひろみさん(写真:編集部撮影)

精子バンクとは、ドナーが提供した精子を検査して凍結保存し、それを必要としている人を診る医療機関に供給する施設だ。精子を受け取った医療機関は、患者の非配偶者間人工授精(AID)や、体外受精(IVF-D)、顕微授精などの生殖補助医療に提供精子を使っている。ただし、日本では法に基づいた精子バンクは確立されていない。

日本で精子バンクの役割を担ってきたのは、日本産科婦人科学会(日産婦)の自主ルールで認められた17の医療機関のみだ。それらの医療機関は一般向けに名前や所在地は公表されておらず、受診したい人はネット検索などで見つけなくてはならない。しかも、17医療機関の多くがドナーの完全な匿名性を条件としてAIDを実施してきた。つまり、ドナーからの精子提供は法的に空白かつ玉石混淆のグレーゾーンで、密やかに行われてきたのである。

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