30〜50代といえば更年期が不安になる年代でもある。そのため、症状があっても「更年期障害だろう」「仕事が忙しいから疲れている」「年齢のせいで太った」などと考えやすく、医療機関を受診しないまま過ごしてしまうケースもある。
実際、渡邊医師は「見分けるのは非常に難しく、更年期の諸症状と甲状腺機能低下症の両方を持ち合わせている方もいます」と話す。
ただ、症状の表れ方には1つのヒントがある。
甲状腺機能低下症では寒がりや体重増加、むくみなど、機能の「低下」による症状が中心だ。一方で、汗が増える、動悸がするといった症状は、甲状腺ホルモンがむしろ過剰になる甲状腺機能の「亢進(こうしん)」でみられる症状だという。
「機能の低下と亢進の症状が同時に表れることは、通常ありません。もし、低下症と亢進症の症状が混在していれば、更年期の諸症状など別の要因の可能性があります」(渡邊医師)
がんとは違うが重篤になることも
甲状腺の病気というと、がんとの関連を不安に思う人もいるかもしれない。実際、首が腫れて大きくなることもある。だが、渡邊医師は「両者はまったく違う病気」と説明する。
「甲状腺機能低下症はホルモンの分泌異常による病気で、一方の甲状腺がんは細胞ががん化して起こる病気。そもそもの病気の種類が異なり、甲状腺機能低下症が甲状腺がんの原因になるわけではありません」
一方で、極めてまれではあるが、甲状腺機能低下症の治療を中断したり、診断が遅れたりして、甲状腺ホルモンが著しく不足した状態が長期間放置され、さらに感染症などが引き金になると、「粘液水腫性昏睡(こんすい)」と呼ばれる重篤な状態に陥ることがあるという。
「全身の代謝が低下して、意識障害や低体温、呼吸不全に陥り、命に関わることもあります。過度に恐れる必要はありませんが、甲状腺機能低下症を治療中の方は定期的に通院すること、甲状腺機能低下症と診断されていない方は疑わしい症状を放置しないことが大切です」と渡邊医師は言う。


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