ドモホルンリンクルがテレビCMを開始したのは、まだスキンケア商品のCMが珍しかった1986年、当時は故・中村玉緒さんや泉ピン子さんが起用されていたという。
「通信販売での化粧品購入が珍しかった時代に、とにかく『無料お試しセット』を通じてブランドを知っていただき、安心感を持っていただくための入口として、著名人を起用しました」
当時中村玉緒さんは40代後半、泉ピン子さんは30代後半。「肌に悩みが出始める年齢層」がターゲットだったことは、この頃から変わらない。
レスポンス獲得から、理念を伝えることへ目的をシフト
1993年の大量返品以降は、CMの目的をレスポンスの獲得から、理念や製品のストーリーを正しく理解してもらうことへとシフトしていった。
「初めての方にはお売りできません」「お肌にお悩みのない方にはおすすめできません」「店頭ではお売りしていません」。ドモホルンリンクルを象徴するフレーズが次々と生まれたのも、この頃だ。
近年は、レスポンスとブランディングを融合させたCMが中心となった。2023年の「事実篇」というCMが放映された際には、『攻殻機動隊』シリーズで音楽を担当した川井憲次氏の手掛けた音楽と荘厳な世界観が相まって、SNSでもその意外性が話題を集めた。
2024年からは、俳優の高良健吾さんがドモホルンリンクル史上初めてブランドアンバサダーに就任し、CMのナレーションを担当している。
「高良さんご自身が私たちと同じ熊本県出身で、地元への愛情が深いこと、そしてドモホルンリンクルが、年齢や性別を問わないスキンケアであることを理由に、アンバサダーをお願いいたしました」
ドモホルンリンクルのCMが記憶に残るのは、見る側の「当たり前」が裏切られることにあるように思う。通常、CMは商品を売るためのものだ。それなのに「売らない」と最初に言われてしまう。すると「なぜ?」という疑問が生まれ、消費者としてその理由に耳を傾けたくなってしまうのだろう。
そこに再春館製薬所が映し出したのは、イメージタレントではなく、自然や工場、そこで働く人々だった。真摯に研究に打ち込み、ていねいに商品を扱う誠実な姿勢。著名人のイメージに商品を重ねるのではなく、自分たちの理念や哲学を伝えることを選んだ。


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