再春館製薬所は「徹底したお客様志向」を標ぼうしている。
熊本県益城町にある本社は、かなり特徴的だ。コールセンターから研究開発まで、すべての部署が、テニスコート15面分のワンフロアに集結しているのだ。ガラスの壁越しには研究室までもが見渡せる。
これには、部署間のコミュニケーションを円滑にするという目的があるという。
社内には「お客様プリーザー(英語のplease(人を喜ばせる)の意味から転じた造語)」と呼ばれる電話オペレーターが約400人いる。顧客から伝えられた苦情や助言はそのまま同じフロアの事業部に伝えられるため、すぐに改善に取り掛かることもできるのだ。
実際に「お客様の声」をきっかけに改善したことも数多くある。例えば、2000年に製薬会社発のスキンケアブランドをイメージして、容器を「三角フラスコ」型にしたことがあった。すると直後から「これまでのスペースに収まらない」と顧客から大ブーイングが起こり、すぐさま改善したという。
人事評価の基準は、「お客様になりきれたかどうか」も重要な意味を持つ。広いフロアを見渡せる場所には「お客様の椅子」を置き、いつでも見られているという意識で行動することを促している。
なぜ、ここまで「お客様志向」を重視するのか。それには30年以上前に起こった会社存続の危機が影響している。
大量返品から始まった「TM改革」
1982年に通子氏が再春館製薬所の代表取締役に就任すると、大規模な改革が始まった。当時は女性週刊誌の綴じ込みハガキ広告が中心だった販売戦略を大転換。
85年、NTTによってフリーダイヤル制度が始まると、これをいち早く導入。フリーダイヤルによる注文販売を開始した。今や誰もが知る電話番号も、このときに通子氏が引き当てたものだという。


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