それなのに今回、実際に性被害を訴えた自局職員に対しては、主治医と産業医が求めた異動を認めず、「原則」を優先して復職を困難にしてしまった。そこで「山口の事件から何も学んでいないのではないか」という批判が出るのは当然である。
不祥事が発覚した後、企業は決まって「再発防止に努める」「人権意識を高める」「コンプライアンスを徹底する」と表明する。しかし、具体的な管理体制の見直しがなければ、反省は形だけのもので終わってしまう。
対応を見直す“圧”がかからない
ここで憂慮すべきなのは、NHKがこの不十分な対応をもって本件を幕引きにしようとしている節があることだ。中居正広の問題が起こった際、フジテレビはテレビ中継や動画撮影を禁止する会見を開いて、激しい批判を浴びた。さらに、スポンサー企業が次々とCM出稿を取りやめる事態となった。それを受けて、フジテレビは改めて会見をやり直して、第三者委員会による調査を行うことになった。
もちろんフジテレビの当初の対応には問題があったのだが、民放ではスポンサー企業という外部の目があるために対応を見直す機会が得られたとも言える。
しかし、NHKにはそのような力学が働かない。そのため、今回の問題でもこれ以上の踏み込んだ対応をする可能性が低いと考えられるのだ。ただ、これはNHKが自らの報道機関としてのアイデンティティを手放すような行為であると言わざるをない。


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