もう1つは出店戦略です。同じ幹線道路沿いに店舗を増やしていくなかで、群馬や茨城では店舗同士が想像以上に商圏を奪い合ってしまうケースがありました。実際に3店舗のうち真ん中の1店舗を閉めたところ、両側の店舗の売り上げが伸びたこともあります。
つまり、私たちは商圏を狭く見積もっていたのです。空いた店舗をどう活用するか。余ったスペースをどう生かすか。この2つの課題が重なったとき、「もつ煮定食屋」というアイデアが浮かびました。それが、もつ次郎というダブルネーム店舗の始まりです。
もちろん、空きスペースの使い道はいくらでもありました。倉庫にすることもできたでしょう。別業態を誘致することもできたでしょう。
それでも最終的にもつ煮を選んだのは、私自身が好きだったからです。好きなものには、人は自然と熱量を持てます。どこにこだわるべきか。何をお客様に届けたいのか。好きだからこそ語れるし、好きだからこそ妥協したくない。
事業を始めるとき、論理はあとからいくらでも整理できます。でも、最初の一歩を踏み出させるのは、「好き」という気持ちではないでしょうか。マーケティングや市場分析は、入口を教えてくれます。
しかし、その先で事業を大きく育てるのは、発案者の熱量です。私は今でも、「好きだったから始めた」という理由ほど強いものはないと思っています。
売れない時間に来店理由をつくる
もつ次郎は、もともとロードサイド店向けの業態として考えていました。私自身が北関東でもつ煮定食のおいしさに魅了されたこともあり、最初は都心部で展開する発想はなかったのです。
転機になったのは、五反田にある新メニューの研修センターでした。せっかくだから西五反田2丁目店でも試してみようという話になったのですが、朝と昼は忙しく、もつ煮を仕込む余裕がありません。そこで、夜限定で販売を始めることにしました。

