鄭さんたち韓国人は、新大久保の清掃を定期的に行うようになった。これを機に、商店街との接点も増えていく。そして、鄭さんは日本側の商店街にも加入して、コリアンタウンというよりも、地域のための活動にも力を入れていく。同胞たちには日本のルールを守るようチラシを配って回り、少しずつトラブルは減っていった。
「もう日本がふるさとなんです」
その頃、新大久保はさらなる「国際化」の時代を迎えていた。ネパール人やベトナム人も急増し、この街で飲食店などのビジネスを広げつつあったのだ。
「街に貢献しないと、というのが新宿韓国商人連合会の考え方でもあったので、ほかの国の人たちとも協働しようと思ったのですが、ネパールもベトナムも窓口がわからない。そこで新宿区の多文化共生推進課や、商店街の人たちと一緒に、いろんな店を回ってね」
結果、両国のコミュニティの代表ともいえる人々とつながり、国を越えて新大久保のために活動しようと「インターナショナル事業者交流会」が結成された。日本、韓国、ネパール、ベトナム(後にバングラデシュと中国も参加)の事業者が定期的に会合を持ち、意見を出し合い、地域のためになにができるのか話し合う。
日本でも稀な取り組みとして、メディアに取り上げられることも多いが、鄭さんは2017年の第1回会合から、韓国側の中心になって参加してきた。
そして2023年には、「新宿韓国商人連合会」の会長に就任した。しかし、それも本業の傍らで、すべてボランティアだ。どうしてそれほど熱心に地域のために活動しているのだろうか。
「まあ、誰かがやらなきゃならないことですしね。なにより、地元の日本人とうまくやっていかなきゃならないって気持ちはやっぱり大きい」
現在は、さらに増え続ける観光客によるオーバーツーリズム対策が目下の課題で、自治体や町会などとも話し合いを続けている。また、クリーン活動をきっかけに、地元の日本人と交流が深まった自分たちの経験を、ほかの外国人に伝えてもいる。鄭さんたちのアドバイスを受けて、ネパール人とバングラデシュ人も、街の清掃に取り組み始めた。
「初めて日本に来てから40年以上。人生の3分の2を過ごしてきました。ふたりの子供たちも日本で結婚して、日本の企業で働いています。もう韓国に帰るつもりはないですし、だから国籍も日本に変えました。この国に骨を埋めるつもりです。日本はもう、私のふるさとなんです」
移り変わりの激しい街を、鄭さんは今日も歩き続けている。


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