さらに7年ほど前には、1杯800~1200円ほどだった価格を撤廃した。決まった価格が存在せず、お客さんが自分で決めた金額を支払うスタイルになっている。
「その時も、台風か何かで屋台を修理するタイミングで。荷物を全部下ろして、また戻すときに、ふと『せっかく棚が空になったんだから、お酒の種類を減らしてみるのも面白いのかもしれない』と思ったんです。お酒をなくすのなら、価格もなしにしちゃえと」
気になる売り上げ事情は……?
気になるのが、売り上げ事情だ。神条さんによると、価格をなくして以降に10万円以上を支払った人もちらほらといるという。「パッと5人くらいは思い出せますね」と話し、中には1杯でそれくらいの金額をポンっと払った人もいるのだとか。
反対に、100円くらいだった人もいた。しかし、これには裏話がある。
「今でも忘れない、隅田川沿いで営業していた時のことです。夜景を撮影しに来ていた女の子が、屋台が気になったのか来てくれて。どうも持ち合わせがなくて、ポケットに100円くらいしか入っていないようでした。
『値段は決まってないから、1杯どうぞ』と飲んでもらって、持っていたお金を全部置いていってくれたんですね。それで終わらず、後日友達を連れてきてくれて。お金がなかった日の分も払ってくれた。そんなこともありました」
ちなみに、細かい数字こそ教えてもらうことは叶わなかったが、オープン以来ずっと売り上げは安定していて、だいたい新卒社員の初任給くらいは稼げているという。リーマンショックでもコロナ禍でも壊滅的なダメージを受けることはなかった。
リスクと言えば、自身の体調だ。数年前にがんで入院し、現在は骨髄異形成症候群(MDS)と向き合っている。骨髄内で血をうまく作れず、数値的には輸血を毎月しないといけない水準にあるという。会話を続けると会話がもたないこともあり、基本的に立ち仕事と考えるとかなりのハンデだ。
365日休まず営業していたTWILLOは現在、週2~3日ほどのペースになっている。屋台を作ってくれた町工場も数年前に閉業してしまった。
「それでも、やっと見つけた自分の人生で、自分の冒険。できればこのまま続けたいとは思っています」
きっと今夜も都内のどこかで、白い屋台を待っている人たちがいる。まだまだTWILLOの冒険は続いていきそうだ。

