すると、企業側に起きるのは「疑心暗鬼」と「業務負荷の増大」です。目の前のエントリーシートに書かれたエピソードが本当のことなのか。どこまで盛られているのか。あるいは、本人の経験をもとにしてはいるが、表現のかなりの部分をAIが整えたものなのか。その判断が、年を追うごとに難しくなっています。
学生は、騙すつもりはないが過大に飾る。採用担当者は「信じたいが、信じきれない」。しかも、大量の応募書類を前に、短時間で判断しなければならない。文章の巧拙だけでは見抜けない。かといって、すべてを丁寧に深掘りする時間もない。面接に進んでも状況は変わらない。そのような負のループが始まっています。
採用担当者は、限られた時間の中で、目の前の学生が語るエピソードのどこまでが本人の言葉で、どこからが準備された"正解"なのかを見極めようとします。しかし、学生には、すでに繰り返し準備してきた想定問答があります。もちろん、AIを活用して。
その状況下では、採用担当者の側で「いったい何を見ている選考なのか」が曖昧になる瞬間が生まれるのも無理はありません。
学生と企業による「AIvsAI」という構造
本来、採用選考は候補者を疑うための尋問の場ではありません。採用担当者や面接官は、目の前の学生の可能性を理解し、組織の未来をともにつくれる人材かどうかを見極めようとしています。しかし、AIによって整えられた応募書類や、過度に準備された回答が増えるほど、相手の言葉をそのまま受け止めることが難しくなります。
「この経験は本当に本人のものなのか」「この言葉は本人の考えなのか」「AIが整えた答えを、本人の力として評価してしまっていないか」。そうした疑いを抱えながら、それでも合否という、学生の人生にも企業の未来にも影響しうる判断を下さなければならない。ここに、採用現場の心理的な重さがあります。
これが続けば、採用担当者は疲弊します。
しかし、この疲弊は、単に学生側だけの変化によって生じているわけではありません。企業側もまた、その対抗策としてAIを採用実務に入れ始めているためでもあるのです。


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