たとえばタンパク質は1gで4カロリーしか生み出さないのに、脂質は1gで9カロリーも生み出せます。また脂溶性ビタミン(ADEK)は脂質と一緒でないと体に吸収されません。脂質ゼロだと、これらのビタミンが吸収出来ず欠乏症になります。
これを代表するのが「ウサギ餓死」という言葉です。紀元前150年ごろ、飢餓状態だったローマ軍は運良くウサギの群れを発見しました。これで餓死を免れられると思ったローマ軍はウサギ肉をこぞって食べましたが、結果はなんと多くの兵士が「肉を食べたい」と思いながら空腹で餓死したのです。肉を食べているのに餓死したのです。
ウサギは草食動物ですが、捕食者から逃げることに特化して進化してきた結果、アスリート並みの発達した筋肉を有しています。そのためウサギ肉は肉食動物以上に脂肪が少なく、そのほとんどがタンパク質で構成されています。それだけを食べ続けると脂質不足で急性の栄養失調を引き起こします。
結果、肉(ウサギ)を食べても食べても肉(脂質)を欲するようになり、中毒症状が発生するのです。肉を食べているのに肉を欲して肉中毒になるというのは、皮肉なものです。肉なら何でもいいというわけではありません。
肉食動物の肉はアンモニア臭が強く、風味が悪い
また、肉質は、その動物が何を食べて育ったかにも大きく影響されます。
肉食動物は、餌である草食動物に含まれる尿素や、腐敗した肉で合成される化学物質を体内に溜め込むことになります。また、草食動物は、植物細胞のセルロース・炭水化物・糖質を盲腸でアミノ酸等に作り変えて身体を作るのに対し、肉食動物は、動物細胞のたんぱく質をアミノ酸に分解して作り変えて身体を作っています。この過程で肉食動物の体内には、分解産物である「アンモニア」が多く発生しているのです。
これら2つの要因から、肉食動物の肉は、アンモニア臭が強く、風味が悪くなります。そういう風味が、いわゆる獣臭さにつながるわけですね。実際、とある地域のクマを食べたことがある人によると、秋よりも春のクマの方が美味しいとのことです。これは、作物の実りある春の熊はベリーを多く食べるのに対し、秋の熊は魚を多く食べるためだとされています。
では、なぜ草や果実を食べる動物の方が、お肉が美味しくなるのでしょう。別に、草を食べれば何でも美味しくなるわけではありません。現代は、餌によって肉の風味をコントロールしているから美味しいのです。
たとえば、イベリコ豚という豚はどんぐりを食べて育ちます。どんぐりにはオレイン酸という脂肪酸が含まれており、これを餌とするイベリコ豚もオレイン酸の含有量が多くなります。

