いまKさんは、実家を出て一人暮らしをしている。何がしたいかは、まだ決まっていない。大学院に進むつもりではいるが、その先のビジョンは固まっていない。
インタビューのなかで、彼はこう言った。
「正直、親とは縁を切りたいなと思っています」
「あんたはもうダメね」と言った母親の言葉は、東大に合格しても、消えなかった。Kさんが東大に受かったあとも、親の態度が根本から変わったかといえば、そうではなかったようだ。
弟に注いだ期待のほうが、兄への関心よりもずっと大きかった。合格通知が届いたとき、親は素直に喜んだかもしれない。だが、その喜びは、息子を一度見捨てた人間のものだった。
「東大」は本当に自分が登りたい山だったのか?
幼稚園の塾でIQ127と言われた子は私立小学校で「ダメ」になり、親に見捨てられ、同級生に見下された。しかし、そのすべての言葉を裏切る形で、東大に届いた。
だが、届いた先で、彼はまだ自分の山を見つけていない。誰かが設定した「東大」という頂上が、自分の登りたかった山だったのかどうかを、いま問うている。
神童と呼ばれた子の歩みは「合格」のあとも続く。そしてそれは「あんたはもうダメね」と言った親と「縁を切りたい」という、静かで重い結論のかたちを取ることもある。

