しかし、ぷっくりと実ったブルーベリーの横には、イノシシ除けの柵が張り巡らされていた。
サルの被害は1000万円超…40年の闘い
実は八木下農園では、野生動物の被害が深刻だ。イノシシは畑に入り込み実を食べる。大きな個体は木に乗りかかり、枝を折ってしまうこともある。猟師と連携して箱罠を仕掛け、対策を練っているという。幸い、最近はイノシシの出没は落ち着いている。ただ、シカもすぐ近くまで来ていると聞き、警戒を強めている。シカは葉っぱも幹も食べてしまうため、なんとしても阻止したい。
一番手を焼いたのはサルだ。40年以上畑を荒らされ続け、被害額は1000万円以上にのぼる。
「サルには本当にエネルギーを使った。メンタルもギリギリで、精神的に一番きつかった」と敏雄さんは振り返る。
サルの被害を防ぐために、専門家からは落ちている実を片付けるよう言われることがある。しかし、舌の肥えたサルは、落ちた実など食べないという。
「時期や場所を覚えていて、群れでわーっと来て、一番おいしい実を食べるんですよ」
あまりにも長く被害が続くため、周囲の農家の中には、諦めてしまう人もいた。行政に訴えても、なかなか動いてくれなかったという。それでも声を上げ続けた結果、徐々にメディアが報道するようになり、ようやく小田原市の職員が理解を示してくれるようになった。敏雄さんたちの声は神奈川県まで届き、2021年、サルの群れの全頭捕獲が決定した。
もう同じ思いはしたくない。やっと納得できる味がつくれるようになり、多くの縁がつながった。敏雄さんの果物を楽しみにしてくれる人がいる。野生動物に脅かされる生活には戻りたくない。

