本来、2025年は「AIエージェント元年」になるはずだった。OpenAIのサム・アルトマンCEOは、目的を与えるだけで自律的に作業を進めるAIエージェントが「労働力に加わる」と予測し、テック企業は相次いでAIシフトを理由とした人員削減を発表した。また、このエージェンティックAIの熱狂に投資が追随。PitchBookのレポートによると、OpenAIやAnthropicなどの水平型プラットフォームを除く垂直統合型(バーティカル)AIエージェントスタートアップの2025年におけるVC調達額は、世界全体で前年比252%増の241.7億ドル(約3.9兆円)であった。
AIによる成果は期待を下回った
しかし、その成果は調達額が示すほど華々しくはなかった。プログラムのコーディングなど、一部の領域において導入が急拡大したものの、逆に多くのスタートアップは厳しい現実と向き合うことになった。AIエージェントを実装・運用するためのインフラ整備や、顧客と接する現場で行動を委ねられるだけの「信頼」を築くことは容易ではなかった。
それでもエージェンティックAIは2026年に入っても資金を集め続けている。3月初旬までに調達額は26.3億ドル(約4270億円)に達した。
ただし、投資の「仮説」は変わりつつある。管理されたデモを見て、AIエージェントに何ができるかを判断して出資する段階は過ぎ、投資家は、AIエージェントを訓練できて、現場で成果を出せるスタートアップに資金を振り向け始めている。
こうした変化をとらえたスタートアップの1社が、Patronus AI(パトロナスAI)である。同社は最近、Greenfield Partners(グリーンフィールド・パートナーズ)主導のシリーズBで5000万ドル(約81億円)を調達した。さらにNotable Capital(ノータブル・キャピタル)、Lightspeed Venture Partners(ライトスピード・ベンチャー・パートナーズ)、Datadog(データドッグ)、Samsung(サムスン)といったVCや企業も参加している。
同社はMeta(メタ)のAI研究者だったAnand Kannappan(アナンド・カンナパン)氏とRebecca Qian(レベッカ・チェン)氏が創業。AIエージェントを本番投入する前に性能をストレステストできる「Digital World Model(デジタル・ワールド・モデル)」と呼ばれるシミュレーション環境を構築している。
同社が挑むのは構造的な課題だ。これまで、AIエージェントの性能は短時間で完結する明確なタスクを静的な環境で評価してきた。しかし、一つのタスクが数日に及ぶような複雑なワークフローの自動化を実現しようとすると、失敗する可能性が飛躍的に増えてしまう。
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