それが預金だ。経済が活発化する中で、国内銀行の貸出金残高は年率5%超の増加と歴史的な水準になっている。一方、預金残高の伸びは3%程度にとどまる。22年7月以降、預金の伸びが貸出金の伸びに追いつかない状況が続いているのだ。その結果、貸出金残高を預金残高で割った預貸率はメガバンク、地銀とも上昇傾向にある。

超低金利時代は、貸出金以上に預金が伸びていたため預貸バランスに注意を払う必要はなかった。高い運用利回りが期待できず逆ザヤになってしまうリスクから、メガバンクを中心に預金を忌避する銀行すらあったほどだ。それが一転、今や各行が競うようにして預金獲得に乗り出している。
本来、銀行全体のバランスシートは、貸出金が増えるとそれに伴って預金も同額だけ増えるはず。にもかかわらず預金が貸出金に比べて伸びづらい背景には、利上げで個人向け国債の利回りが上昇し家計の国債保有比率が高まっていること、またインフレによって税収が過去最高を更新し続けていることなどがある。
これは個別行レベルで細かく見ても同じで、預金は貸し出しに伴い多少増加しているものの流出している。その分は新たに預金を獲得するか、預金以外の調達手段によって補う必要がある。それができなければ、別の資産を減らして貸し出しに振り向けるか、貸し出し自体を減らす以外に策はない。

国際的な銀行規制のバーゼルⅢでは、「安定調達比率規制」が定められ、低金利で容易に調達できるコールマネーのような短期借り入れではなく、預金や長期社債などによる中長期で安定した調達が求められる。比率が規制水準ギリギリまで低下している銀行もあり、悩みの種になっている。
より深刻なのは、相続なども相まって預金流出に直面している小規模な地銀だ。こうした銀行はメガバンクや大手地銀ほど簡単には社債調達ができない。
たとえ社債調達ができたとしても調達コストが預金より高いため、利ザヤが大幅に圧縮されてしまう。結果、収益が圧迫され、預金獲得の施策も打ちづらくなるという負のループにはまってしまうわけだ。
くすぶる5つの火種
銀行業界にくすぶる火種はこれだけではない。
預金とは異なる“第2の調達手段”として重宝されてきた「日銀借入金」も貸出増加支援制度の終了によって頼ることができなくなっており、ネット銀行を中心に戦略の見直しが求められている。
ほかにも、不動産融資比率の高まりや海外出資先の収益性悪化、AIによるサイバーリスクの高まり、経営統合などの地銀再編ラッシュと、銀行業界を取り巻く環境は、好調な業績とは裏腹に安泰とは言いがたいのが実情だ。
そこで今回の特集では①預金、②戦略、③海外、④AI、⑤再編という5つの火種について掘り下げた。
「わが世の春」は現実かあだ花か。好業績の裏で銀行が抱える問題は根深い。

