もちろんそういったものが、ほかのものとの差別化になったり、ストーリーになったりするのですが、お客さんが知りたいのは、そこだけではありません。
例えば掃除機を買う人は、使われているモーターの性能を知りたいわけではありません。「掃除が楽になるのか」「短時間できれいになるのか」「腰をかがめなくて済むのか」そんなことに興味があります。つまり、人は商品そのものに興味があるのではなく、自分にどんな変化が起きるのかに興味があるのです。
伝えたいことと、相手が聞きたいことは違う。ここを間違えると、どれだけ価値があっても届きません。大切なのは、自分が何を言いたいかではありません。相手は今、何に関心を持っているのか。どこなら耳を傾けてくれるのか。そこを考えることです。
人は機能ではなく、その先にある人生や感情に心を動かされるものです。しかし、その感情にたどり着くためには入り口が必要です。そして、入り口となるものが、世間の興味なのです。
ビジネスとは、その入り口を探すことでもあると考えています。良い商品だから売れるわけでも、良い企画だから採用されるわけでもない。世間の興味とつながった時、はじめて価値は広がっていくのです。
そのため、私は、新しい商品や企画を考える時ほど、自分のことより相手のことを考えます。世の中は今、何に興味を持ち、何に心を動かされているのだろう。そして、自分が伝えたい価値はどこでその興味と交わるのだろう。その問いを持つことが、価値を届けるためには大切です。
自分もまた、この社会で生きている1人の生活者
ビジネスをしていると、「お客さんのことを考えなさい」と言われます。顧客ファーストなどという言葉は、今や当たり前のように、よく聞かれますよね。これはその通りです。
私は「すべての答えはお客さんの中にある」と考えて仕事をしています。どれだけ会議室で議論しても、お客さんが求めていないものは売れません。どれだけ立派な理論をつくっても、お客さんの心が動かなければ意味がありません。だからこそ私は、常にお客さんを見ることを大切にしてきました。
ですが、決して忘れてはならないのが、自分自身もまた1人の顧客だということです。自分もまた、この社会で生きている1人の生活者だということです。


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