この人は、きっと商店街のどこかの店舗の若旦那で、時間のあるときに「金ちゃん」として活動するのだろう。私は勝手にそう考えて、質問を始めた。ところが、どうにも話がかみ合わない。
「僕はどのお店の店員でもありませんよ。ただの金ちゃんです。仕事は商店街の宣伝を担当してます。いや、担当っていうほど大げさでもないか、えっと、勝手にやってるんですよ。街のことなら何でもやる、何でも屋の金ちゃんです!」
そう言ってビシッとポーズを決める。
正直、何を言っているのかよくわからない。わからないけど、そんなことはどうでもいいじゃないか、と思わせる不可解なパワーが金ちゃんにはある。
毎月祭りが開催される街
金ちゃんにも驚いたが、その姿を見ても、ちっとも驚かない街の人にも驚いた。要するに方南町の住民たちは全身金ピカの金ちゃんを見慣れているわけだ。焼き鳥屋のおじちゃん、八百屋のおばちゃんたちから「おう金ちゃん」と声をかけられる。「どうもッ」と手を挙げて応える金ちゃん、街にすっかり溶け込んでいる。これが方南町の日常だ。
「方南町は、毎月最終日曜日にお祭り(方南町日曜まつり)をやっています。毎回フリーマーケットや、のど自慢大会などなど、いろんなイベントを開催するんですよ」
街を歩きながら、金ちゃんが説明してくれる。日曜まつりでは、その都度ポスターをつくり、店や電柱に貼ったり、地域の人たちへチラシを配るのも金ちゃんの重要な仕事だ。イベントの内容に関しては、「ほかの街がやらないようなことをやる」がコンセプトなのだそう。
「夏祭りではウォータースライダーまでやっちゃいます。子どもたちに大人気ですよ」(金ちゃん)
商店街の緩い坂道を利用して、そこにプールを並べ、水を流して30メートルのウォータースライダーをつくるらしい(今年は7月26日)。確かに、他の街ではやらないイベントだ。
金ちゃんは本名を金増忍さんという。山口県出身で、もともと俳優を目指して上京した。その後、20年ほど前から方南町に関わるようになった、いわば“よそ者”だ。それが今では「方南町限定のローカルタレント」を自認するまでに街の顔となっている。「方南町は『住民みんなでつくるテーマパーク』のような街を目指しています」と金ちゃんは語る。

