これはギフテッドに限らない話だろうが、表向き静かな子どもたちは学校教育の中で「問題」とされにくく、違和感を抱え続けることもある。
「勉強が好きじゃない」見つからない目標
また、高校では成績悪化にも直面した。「ゲームにハマって勉強しなくなったんですよね。頑張るモチベーションもないし」。皆が準備してくる定期テストは振るわなかったが、範囲が決まっていない模試では点が取れたという。
大学受験では1年浪人し、理系だったが文系志望に変更した。「目標があったほうがいい」と公認会計士を目指すことを決めたが、結果は不本意なものに終わった。
「勉強が好きじゃなかったから、全然できなくて。結局第8志望の大学に行きました」
大学生活もあまりうまくいかなかった。人間関係が希薄になり、試験対策にも身が入らずぼんやりと過ごす日々。心の不調も感じており、大学4年から精神科に通院し「強迫性障害」と診断された。
公認会計士への思いが断ち切れなかったため、就職はせず、早稲田大学大学院会計研究科(会計大学院)に進学した。同大学院を修了すると、公認会計士試験の一部科目が免除されるため、それを狙う意味合いもあった。
そんな打算もありながら進学した大学院だったが、「結構楽しかった」という。「色々なバックグラウンドの人がいたし、大学時代よりも周りと話が合ったんです。学生同士の交流も結構あって、研究科のサッカー部でフットサルをやったりしてました(笑)」
卒業後も試験対策を続けたものの、中々合格できず行き詰まりを感じていた。やおとさんにはいったいどんな悩みがあったのか。
「机に向かって黙々とやるのが好きじゃなくて。初手である程度できるようになると、継続の意欲が湧かないんですよね。短期的な目標をうまく設定できたら違ったと思うんですけど、僕はあんまりきちんと計画を立てられなかった」
やおとさんのインタビュー内では、「勉強が好きじゃない」という言葉が何度か語られた。実はこうした悩みは、ギフテッド当事者の一定数に見られるものだ。「習得が早い」というギフテッド特性は、継続的な努力の重要性を感じにくくすることもある。また、「『学ぶこと』そのものは大好きだけど、机に向かって授業を聞くのは好きじゃないしテストも苦手」という人々もいる。
こうした理由や環境上の要因などから、「高い知能」は必ずしも「高い学力」と結びつかないことがある。知能検査結果から期待される学力に対して、実際の学業成績が低い人々は「アンダーアチーバー」と呼ばれる(『ギフティッドの子どもたち』⻆谷詩織著 より)。やおとさんも、もしかしたらその一人だったのかもしれない。
後編では、やおとさんの大学院修了後から現在までの人生をお伝えする。

