2週間に及ぶ検査入院でも、決定的な異常は見つからなかった。退院計画書まで作成され、工藤さんは「原因不明」のまま退院する寸前だったという。
ところが、たまたま工藤さんの症状を目にした脳神経内科の医師が、ある病名を口にした。
「もしかしたら、スティッフパーソン症候群では?」
工藤さんは、人生で初めてその病名を耳にした。
初めて耳にした「スティッフパーソン症候群」
スティッフパーソン症候群(SPS)は、筋肉の異常な硬直や痙攣を主症状とする極めて稀な自己免疫性神経疾患だ。全身がこむら返りを起こしているかのような強烈な痛みを伴い、症状は時間とともに進行していく。
患者数が非常に少ないため、医師でも診断に苦慮することが多い。さらに一般的な血液検査やMRIなどの画像検査では異常が見つからないケースも多く、病気そのものを疑わなければ専門的な検査へたどり着けない。診断までに数年、長い場合は7年前後を要することもあるとされており、今なお原因の解明や治療法の確立には至っていない。
工藤さんはすぐに脳神経内科へ転科し、「抗GAD抗体検査」と「セルシンテスト」という検査を受けることになった。
- 抗GAD抗体検査:自己免疫疾患でみられる「抗GAD抗体」という自己抗体の有無を調べる血液検査で、SPSの診断を補助する目的で行われる。
- セルシンテスト:筋肉の緊張を和らげる薬「セルシン(ジアゼパム)」を投与し、その前後で症状の変化を確認する検査。投与後に筋肉のこわばりや痙攣が改善すれば、SPSを疑う重要な手がかりとなる。
検査の結果、工藤さんはSPS患者で陽性となることが多い抗GAD抗体は陰性だった。しかし、セルシンテストでは典型的な反応が確認され、翌日の血液検査では筋肉の損傷を示すCK値も大きく上昇。総合的な判断から、ついに「スティッフパーソン症候群(SPS)」と診断された。
「抗体検査は陰性でしたが、SPSは抗体だけで診断できる病気ではないと言われています。医師からは、慢性的な腰痛もSPSの初期症状だった恐れがあると言われています。音に過敏になっていたことも、自律神経に作用するSPS特有の症状だったようです。
また、OPLLの術後から生じている首の骨の痛みについては、SPSの診断を受けた大学病院から『術法にもよるが、本来は取り除く骨を一部残していることが影響している可能性もある』という説明がありました」

