「いいですね。企業の社長たちが賛成してくれたらすばらしいと思います」
「説得できますか?」。私は尋ねた。
「この研究結果を示せば納得してもらえるのでは?」
「難しいでしょう」。ヴィクトリアは認めた。
「それには時間がかかります」
昼寝が脳を保護する「3つのアプローチ」
でも時間がない、と私は考えた。睡眠不足に関するあらゆる統計の厳しい数値が頭をよぎる。私は自分の父が過労で燃え尽き症候群となったこと、母は現在もそれ以上に働き、いつ倒れてもおかしくない状態であることを打ち明けた。
「私も親友のことが心配でたまらなくて」とヴィクトリア。
「いまの社会は悲惨な状況です。ひたすら働いて、トップにのぼり詰めて、成功して、大金を手にする……、そういう人が褒め称えられています。でも、そこにたどり着くまでに何をしてきたのか、考えてみてください。友人を失い、家族を失い、他人の気持ちを踏みにじって……、その結果、身体を壊して、脳の老化がどんどん進んでしまった」
ヴィクトリアの考えによると、昼寝は3つの基本的な方法で脳を保護する。
まずは、脳内のコルチゾール値を下げることでストレスが軽減される。
次に、損傷を受けた脳細胞の再生を促す。
そして「まだよくわかっていない」新たな種類の思考を引き出す。
これについては解明が待たれるところだ。
現段階で、昼寝が記憶力、創造性、認知機能を高めることはわかっているが、それ以外にも脳の機能に対する効果が隠されているかもしれない。
「あなたは昼寝をしますか?」と私は尋ねてみた。
ヴィクトリアがみずからの発見を実践しているのかどうかを知りたかった。
「以前はまったくしなかったんです」
彼女はそう言って、かつてはもっぱら運動がリラックス方法だったと教えてくれた。そして自分の遺伝子はわからないものの、いまでは毎日、昼寝をするようにしているそうだ。
「今日は泳ぎに行く前に寝てみようと思います。泳ぐ前と後とでは、どちらが効果的か試してみたくて。ほかにもいろいろやってみるつもりです」


