最終的に、このカリフォルニアアシカは、飼育員さんが心配したような感染症ではなく、進行した肝臓がんに伴う肝機能障害で亡くなったと考えられました。
黄疸が起こると、皮膚にかゆみが出ることがあります。このアシカも、肝臓がんによる肝機能の低下で黄疸が起こり、かゆみから皮膚を前あしで引っ掻いたり壁にこすりつけたりした結果、脱毛して赤くなっていたのでした。
人間でも「沈黙の臓器」とよく呼ばれているように、肝臓は病気が進んでもなかなか症状が表れません。ましてやアシカは、体が大きいうえに、褐色の毛、色素の濃い皮膚、分厚い皮下脂肪に覆われています。イヌやネコのように気軽に体を触診できませんし、レントゲン検査で内臓の状態を確認することも容易ではありません。
ぼくの経験上、獣医師がいない動物園では動物の健康が損なわれやすいのですが、仮にこの動物園に獣医師が常駐していたとしても、今回の肝臓がんを早期に発見し、アシカの命を救うことは難しかったでしょう。
ただ、このアシカの体内に潜んでいた異常は、肝臓がんだけではありませんでした。心臓を切り開くと、中からそうめんのような細長い生き物が、確認できただけで3匹いたのです。
海の動物の心臓に寄生虫
見つかった生き物は、以前の犬の記事で紹介したフィラリア(犬糸状虫)です(記事はこちら)。
蚊が媒介する寄生虫で、この寄生虫の幼虫を持った蚊が動物の血を吸うと、その吸血部位から動物の体内に侵入します。その後、脱皮を重ねながら成長し、やがて心臓や肺の血管にたどり着いて成虫になります。雄と雌がそろうと交尾し、血液中に多数の幼虫を放出するようになります。
犬糸状虫という名のとおり、主な宿主はイヌで、寄生すると宿主の心臓や肺の血管を傷つけ、呼吸困難や腹水、貧血などの症状を引き起こします。ただ、ネコやフェレットのほか、アザラシやアシカなどの海棲哺乳類に寄生することもあります。

