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「ショーで人気」死んだアシカの心臓に棲みつく"そうめんのような"生物が物語る、動物園が抱える獣医師不在の深刻度

8分で読める
カリフォルニアアシカ
ショーで人気、アシカの死が教えてくれたこととは……(写真:しろまる/PIXTA)
  • 中村 進一 獣医師、獣医病理学専門家
  • 大谷 智通 サイエンスライター、書籍編集者
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今回の依頼者さんが心配していたのは、「皮膚炎の原因が、人間にも感染する病原体ではないか」ということでした。もし感染症で亡くなったのなら、同じ場所で飼育されているほかの動物にも感染が広がるかもしれません。病原体によっては、日々の世話をする飼育員や、ショーをするアシカと接近する来園者への対策も早急に行う必要があります。

動物の病気についての専門知識を持つ獣医師がいない施設でしたが、「なぜ死んだのか」を曖昧なままにしておくわけにはいかなかったのです。

皮膚炎が死因ではない?

解剖台に横たえた100キログラムを超える遺体に気圧(けお)されつつも、努めて普段どおりに、まずは遺体の外側から観察していきます。

事前に聞いていたとおり、皮膚の一部は毛が抜けており、炎症によって少し赤くなっていました。まぶたをめくって結膜の色を観察すると、少し黄色く変色しているように見えました。もしかしたら黄疸が起きているのではと思いましたが、ごく軽度の変化だったため、この段階ではその原因まではわかりません。

分厚い脂肪層を切り開くと、臓器が収まっている空間(腹腔)から大量の黄色く濁った液体が出てきました。腹水です。また、皮下やその周辺の結合組織は黄色みを帯びており、やはり黄疸が出ていたこともわかりました。

黄疸というのは、血液に含まれるビリルビンという黄色い色素が増えることで、皮膚や粘膜などが黄色くなる現象をいいます。

人間では黄疸がひどくなると皮膚が黄色になるので、外見からもわかります。しかし、全身を毛で覆われている動物は、黄疸が出ていても外見から判断することが難しい。そのため、解剖時に注意深く皮下を観察していく必要があります。腹水も黄疸も、肝機能の低下を疑わせる所見です。

取り出してみた肝臓は、ぼこぼこした形状になっていました。そこには肉眼でも明らかに確認できる大きさの腫瘍がいくつもできており、その後の組織検査でがん細胞が確認され、肝臓がんが肝臓全体に広がっていたことがわかりました。

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