香港の人々が日本を選ぶ理由は、単なる中国製品への懸念や経済的なゆとりだけでは説明しきれない、もう一つの深い理由があった。
「1秒も無駄にしない」香港における「癒やし」
生活をしていて感じるのは香港の「効率至上主義」だ。駅のエスカレーターは日本の倍近いと感じるほどの猛スピードで動き、青信号の時間は驚くほど短い。飲食店では席に着いた瞬間に注文を聞かれ、食べ終えた皿はあっというまに下げられる。街全体が「1秒も無駄にしない」速さで回転していく。
スピード最優先の街だからこそ、丁寧な日本の食やサービスが、香港社会での「癒やし」の役割を果たすとチューヤンは言う。
「香港はとにかく急いでいて、効率を一番に考えちゃう社会。でも、日本のレストランや日本を感じる空間に入った瞬間、職人文化が守る空気感に触れて癒やされる。あの瞬間が、僕たちにとっての『休憩』なんです」
街で見かける商品の「日式(日本スタイル)」という言葉に、日本人の筆者は最近では誇りすら感じる。というのも、香港で「日本(ヤップン)」と表現する時、その言葉には「価値のある」「上等な」「洗練された」という意味が含まれることが多々あるからだ。
日本での生活を経て、作り手の「純粋な想い」が形になったものに、強い日本らしさを感じてきたチューヤン。その視点や「日式」の物作り精神は、彼自身のデザインにも大きな影響を与えている(前編参照)。

