ただ時間を確認するのではありません。時計の形を見る。丸いのか、四角いのか。針の長さを見る。数字の書体を見る。メーカー名が書かれていれば、それを読む。秒針が動いているなら、その動きを数秒だけ追ってみる。一見、何の意味もない行動のように思えるかもしれません。しかし、この「意味のなさ」こそが大切なのです。
緊張しているとき、人の意識は自分の内側に向きすぎています。自分の心臓の音、手の震え、声の出方、相手の反応。そうしたものに意識が向きすぎると、緊張はさらに強まっていきます。そこで、あえて外にある具体的なものを見るのです。時計という、感情と関係のない対象に意識を移すことで、頭の中の不安から少し距離を取ることができます。
時計を見る行為には、もう1つの効果があります。それは、「今、ここ」に意識を戻してくれることです。
緊張が高まりすぎているとき、私たちは未来の失敗を想像しています。「嚙んだらどうしよう」「質問に答えられなかったらどうしよう」「変に思われたらどうしよう」。まだ起きていないことに意識が向かい、体だけが先に反応している状態です。
しかし、目の前の時計を観察しているあいだは、未来の不安ではなく、今まさに目の前にあるものに意識が向きます。形、色、針の動き、数字、メーカー名。そうした具体的な情報を1つずつ拾っていくと、頭の中でふくらんでいたはずの不安が、少しずつ小さくなっていきます。
これは、緊張を無理に消そうとする方法ではありません。緊張している自分を責めたり、「落ち着け」と言い聞かせたりするのではなく、意識の向き先を変える方法です。
緊張感そのものは、必ずしも悪いものではありません。適度な緊張は集中力を高め、よいパフォーマンスにつながります。ただし、緊張が高まりすぎて自分の内側に意識が閉じ込められたときは、外にあるものへ意識を移してみましょう。
落ち込んだら、とりあえず階段を上り下りする
気分が沈んでいるときほど、同じ場所にじっとしていたくなるものですが、それではますます気持ちが動かなくなってしまいます。ミスをした、誰かの一言にムカッとした、よいアイデアが浮かんでこない。そんなときは、いったん席を立って、階段を上り下りしてみてください。

