感覚でやっていたことを言語化できるようになったのは、この家で暮らし、発信し、人の反応を通じて自分を客観視できたからだ。「面倒くさがりの自分」は欠点ではなく、設計の原動力だった。感覚を言葉にできるようになったことで、同じ考え方を別の家にも応用できるようになった。この力は、次の住まいでも大いに発揮されることになる。
間取りが変えたのは、家事だけではなかった
実際に住んでみると、想像以上の変化があった。「掃除だけじゃなくて、なにをするにも面倒くさくないんですよ」と大塚さん。すべての部屋が同じフロアにあるため、家のなかでの移動距離が劇的に減ったのだ。
以前なら「あとでやろう」と後回しにしていた洗濯物も、各部屋を回るハードルが下がったことで、溜め込む理由がなくなった。家事を先送りしなくなり、その分ストレスが減った。
家族との距離感も変わった。すべての部屋がリビングにつながる廊下のない間取りは、子どもが小さかった当時、意外な効果をもたらした。
「家を建てたころは長女が小学3年生、長男が年中さんで、正直ずっと一緒にいるのがしんどかったんです。ワンオペだったので、家事にも育児にも疲れていた。だから子どもたちには自分の部屋で遊んでほしいなと思いつつも、廊下を挟むと姿が見えないし不安じゃないですか。リビングに直結した子ども部屋なら、気配を感じながら安心して自分の時間を過ごせたんです」
完全に離れるわけでもなく、ずっと一緒にいるわけでもない"リビング続きの和室”のような距離感が、大塚さんにとっては心地よかったという。結果として、子ども部屋は小さいころからきちんと使われ、物置にならなかった。これは廊下のない間取りがもたらした、思わぬ収穫だった。

